新たな“プロ”の育て方―なぜ左官屋で若者と女性が活躍できるのか [著]原田宗亮
建物の壁はビニールクロスやパネル壁が主流だった。それが最近は自然素材のよさが見直され、左官による塗り壁の需要が増えているという。
ところが、左官職人は最盛期の30万人が7万人弱に減少。若手の定着率の低さが高齢化に拍車をかけている。
このギャップを解決すべく、離職率を40%から5%にまで下げた東京下町の左官業3代目社長が説く独自の職人育成法だ。社員として抱える職人は20〜30代が中心。女性も約4分の1を占める。
従来、新人は下働きが長く続いた。一方、著者が行う教育プログラムでは、モデリングと呼ばれる研修から入る。
最初から鏝(こて)を持ち、名人が塗る姿を撮影した映像を見ながら真似(まね)して塗る。その塗り姿を撮影し、タブレットなどのIT機器を使って、名人との違いをその場で確認、修正。習得に6カ月を要したスキルも1カ月で身につくという。
仕事の「面白さ」を先に教えてから現場に投入。スキルのベースがあるので吸収も速い。現場リーダーも体験させて自律性を高め、4年間で職人へと育て上げる。いわば、「守・破・離」の現代版だ。
他業種でも「応用できる」と視察が多い。深刻な人手不足解消のモデルになるか。=朝日新聞2017年4月9日掲載