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新書ピックアップ(朝日新聞18年5月5日掲載)

矢部万紀子著『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』 

2007年「ちりとてちん」以降のNHK連続テレビ小説のうち11作品を中心に視聴者目線の喜怒哀楽を詰め込んだコラム。「ゲゲゲの女房」で向井理のハンサム夫ぶりに盛り上がり、「あまちゃん」を女一代記にしない宮藤官九郎に賛辞を送る。不出来な作品には怒りつつ、何者かになろうともがくヒロインたちに自分を重ね「堂々とせよ」というメッセージを見いだす。(ちくま新書・864円)

仲正昌樹著『悪と全体主義』 

政治哲学者ハンナ・アーレントのブームが起きるのは、政治や社会が混迷とする時代だという。20世紀の悲劇を歴史的に考察した『全体主義の起原』やユダヤ人虐殺の実務管理者の裁判に取材した『エルサレムのアイヒマン』を、人々が「安住できる世界観」に吸い寄せられる過程を重視したと指摘し、多様なものの見方を保ち、わかりやすさのわなを避けることの重要性を読み取る。(NHK出版新書・842円)

平野暁臣著『「太陽の塔」新発見!』 

あの不可思議な構造物は当初から「大阪万博のシンボル」として予定されたのではなく、「ベラボーなもの」を作ろうとした岡本太郎が万博という祭りをつかさどる神像として乱入させたものだった。建造に新素材や新工法を取り入れ、展示のために収集した世界の民俗資料は後の博物館への布石に。規格外の構想実現の過程を岡本太郎記念館館長が振り返る。(青春新書インテリジェンス・1080円)

マーク・ピーターセン著『英語のこころ』

30年以上日本語で執筆する米国生まれの著者が「語彙(ごい)」に焦点を絞り、時事問題、映画、文学などを題材に英語と日本語を比較、言葉に込められた思いを読み解く。原発問題での「放射能」と「放射線」の違いや擬態語の翻訳の問題、漱石の『こころ』の言葉の使い方に英語の影響を見るなど、言語に対する敏感な発想と経験は示唆的。(インターナショナル新書・756円)