- 『機巧のイヴ』 乾緑郎 新潮文庫 680円
- 『ぬばたまおろち、しらたまおろち』 白鷺あおい 創元推理文庫 1080円
- 『猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる』 シオドア・スタージョン、フリッツ・ライバー他著、中村融編 竹書房文庫 1296円
(1)は時代劇とSFの完璧なる融合。江戸のようで江戸ではない天府を舞台に、天才機巧(きこう)(からくり)師と、伊武と呼ばれる美しい女性型機巧を巡る全五話。物語が少しずつ繋(つな)がり、転がり、うねりとなって最後の大仕掛けになだれ込んでいく。凄(すさ)まじく面白い。「魂とはどこからやってくるのか。そしてどこに隠れているのか」その答えが心に沁(し)みる。
匠(たくみ)の手腕に舌を巻く(1)とは対照的に、(2)はこれがデビュー作。初々しくて、自由で、闊達(かったつ)。民俗学から一転してリリカル学園もの、そして時間を越え、着地した先がまた小気味よいのだ。これだけの要素を良くまぁ詰め切った! 私はこれが好き、と言う思いが全ての文章から溢(あふ)れているようで読んでいて頬が緩む。
(3)は猫SFアンソロジー。地上編と宇宙編、全10匹の猫たちは、重力圏を飛び出してもとことん自由で可愛くて不思議で面白い。猫SFアンソロジーの次は、犬SFアンソロジーも出して欲しい。タイトルはぜひ「犬は喜び、宇宙駆けまわり」で。=朝日新聞2017年10月01日