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「トランプがはじめた21世紀の南北戦争」書評 深刻な分析#生々しく

評者: 加藤出 / 朝⽇新聞掲載:2017年03月19日
トランプがはじめた21世紀の南北戦争 アメリカ大統領選2016 著者:渡辺 由佳里 出版社:晶文社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784794969484
発売⽇: 2017/01/11
サイズ: 19cm/246p

トランプがはじめた21世紀の南北戦争 [著]渡辺由佳里

米タイム誌は昨年12月、「今年の人物」にドナルド・トランプを選び、「The Divided States of America(分断国家アメリカ)の大統領」と呼んだ。
 本書を読むと、同国の市民レベルの深刻な分断が実に生々しく伝わってくる。政党の大統領選挙関連イベントに多数参加した著者は、候補者によって支持者たちが「部族化」し、互いに敵意を強めてきた過程を克明に描写している。
 「ソーシャルメディアの影響も大きい」。実際に顔をあわせて話をすれば理解が生まれることもあるが、同メディアでは相手にひどい罵(ののし)り言葉を平気で浴びせてしまう。トランプは人々の「怒り」を利用しつつ、「『差別、暴言、暴力』が入ったパンドラの箱」を開けた。この状況が進んだら、「アメリカは本当に内戦状態になりかねない」。
 著者は融和を促す「若い政治家」を育てなければならないと主張するが、事態は楽観できないことが本書から伝わってくる。