「安藤忠雄 野獣の肖像」書評 40年来の知己による評伝
評者: / 朝⽇新聞掲載:2016年10月16日
安藤忠雄 野獣の肖像
著者:古山 正雄
出版社:新潮社
ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション
ISBN: 9784103502418
発売⽇: 2016/08/26
サイズ: 19cm/174p
安藤忠雄 野獣の肖像 [著]古山正雄
大阪の下町育ちで元プロボクサー、そして建築は独学。建築家・安藤忠雄の歩みは過剰なまでに物語的で、彼を語ると、どうしてもそうしたエピソードに吸い寄せられがちになる。
本書の著者は、安藤とのつきあいがもう40年近い。タイトルも「野獣」などとうたう。当然ながら熱い人生が語られることになると予想してしまう。実際、ともに英国を旅した際に、安藤がホテルの電話番号をそらんじていたことや、安藤家の人々の実像など、著者にしか知りえないような逸話を明かしている。
一方で、建築論、都市論が専門の大学学長らしく、安藤を建築史の中に位置づけようと努める。古典建築だけでなく、丹下健三や磯崎新ら内外の現代建築家もひきながら、モダニズム、一枚の壁、身体感覚、大阪弁といったキーワードを手がかりに格闘している。
そして現役バリバリの建築家に「欠如の魅力」といった表現を加えるあたりはけっこうスリリングだ。