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「赤塚不二夫生誕80年企画」書評 創造に繋がる愚かさ

評者: 武田徹 / 朝⽇新聞掲載:2016年09月25日
バカ田大学講義録なのだ! 赤塚不二夫生誕80年企画 著者:泉 麻人 出版社:文藝春秋 ジャンル:マンガ評論・読み物

ISBN: 9784163904870
発売⽇: 2016/07/14
サイズ: 19cm/303p

赤塚不二夫生誕80年企画―バカ田大学講義録なのだ! [著]泉麻人ほか

 ♪みやこの西北 ワセダのとなり……。そんな校歌で知られる「バカ田大学」。漫画『天才バカボン』に登場する架空の大学で講義するという「お題」に、多彩な講師陣が挑んだ。
 たとえば俗を極めて神々しささえ漂う人生をみうらじゅんが披露し、宇川直宏が「バカも天才も神も同じ超越者」「これでいいのだ」と決めゼリフで〆(しめ)る。
 「バカ田大建学の父」赤塚不二夫は「知性とパイオニア精神にあふれたバカになんなきゃいけないの」と述べたという。その教えを「天才=賢さ×愚かさ」と数式に変換して表現してみせた茂木健一郎が、賢さを人工知能がカバーする時代に至って愚かさこそがむしろ勝敗を決すると指摘するのにハッとさせられる。
 創造に繋(つな)がる愚かさをいかに育てるか。つまり大学は今やバカ田大学を目指すべきなのだ。そんなアイロニーの含意を理解できないお利口さんに担われている限り、日本の教育は未来の才能を殺し続けるのだろう。