1. HOME
  2. 書評
  3. 長崎らしさ湛えだ絵

長崎らしさ湛えだ絵

川原慶賀の「日本」画帳 シーボルトの絵師が描く歳時記 著者:下妻 みどり 出版社:弦書房 ジャンル:歴史・地理・民俗

価格:2916円
ISBN: 9784863291362
発売⽇: 2016/06/24
サイズ: 15×22cm/245p

シーボルトが情報収集の目的で、専属絵師・川原慶賀に描かせた日本の風物と日本人についての絵を歳時記を軸に編集。慶賀作品200点余と関連図版150点を、同時代に書かれた野口文…

評者:蜂飼耳 / 朝⽇新聞掲載:2016年08月21日

川原慶賀の「日本」画帳―シーボルトの絵師が描く歳時記 [編]下妻みどり

 江戸時代、幕府の鎖国政策のもとで唯一開かれていた長崎の出島。今年没後一五〇年のオランダ商館医・シーボルトは、さまざまな情報や文物を持ち帰り、ヨーロッパにおける日本研究の基礎を作った。
 長崎の絵師・川原慶賀は、シーボルトらの求めに応じて数多くの絵を描いた。人物、動植物、風景、行事や産業、人生儀礼など。記録的な絵だ。本書は、慶賀より二世代ほど年上の野口文龍による『長崎歳時記』の文章と、オランダ商館長・メイランの文章の現代語訳を、慶賀の絵と合わせるという構成をとる。思い切った作りだ。
 精霊流しや阿蘭陀船出航の様子など、長崎らしさを湛(たた)えた絵に、思わず見入る。また、人の一生を儀礼の面から捉えた一連の絵はどこか懐かしい。慶賀の作品のほとんどは海外にあるが、時代を超えて多くを教えてくれる。絵に残る昔のことがとても新鮮。「シーボルトのカメラ」と称される理由がよくわかる。