名古屋市中心部のテレビ塔の下で、フェアトレードのファッション雑貨を扱う店を開いている。店には国際認証マーク付きチョコレートや、カンボジアの女性らが編んだ水草のかごバッグ、薬草で染めたスリランカ製の洋服などが並ぶ。名古屋みやげのお菓子にもフェアトレードの砂糖を使っている。
20代のころ地元テレビ局の情報番組で顔が知られた存在だった。子育て中に、カカオ農園の児童労働の新聞記事を読み「息子を笑顔にしてくれるチョコの向こうで、小さな子たちが過酷な労働をしている不平等を何とかしたい」と思った。
フェアトレードとは、途上国の生産者の人間らしい生活が成り立つ公正な消費をしようという考え。できることからやろうと、フェアトレードのチョコを販売し始め、次第に町ぐるみでフェアトレードに取り組む活動にはまっていった。名古屋市は2015年9月に日本で2番目にフェアトレードタウンに認定された。原田さんは現在、推し進めたNPO法人の代表だ。
タウン作りは国際的な運動で世界で2千以上が認定されている。日本では11年に熊本市が初めてで、次いで名古屋、神奈川県逗子市、浜松市と続いた。現在は札幌市、岐阜県垂井町などで準備が進められている。
日本のタウン認定組織の設立に尽力してきた渡辺龍也・東京経済大教授は「これだけ早く広まるとは思わなかった。日本の認定基準は厳しく、フェア(公正)である対象も環境や障害者と幅広い。世界と比べても奥行きがある」と評価する。
名古屋市ではフェアトレード商品を扱う店が、約250から3年間で約370に増えている。また、全国で初めて学校給食にフェアトレード認証の白ゴマを使い注目を集めている。
「今、ちょっとフェアトレードをやりたいと思う企業が増えているのを感じます。認知されてお金にもなる。そこは、この運動が続いていく上で大事なことです。それと楽しくなければ」と原田さん。
5月12日は「世界フェアトレード・デー」。テレビ塔周辺の公園では、にぎやかなイベントが計画されている。
(文・写真 久田貴志子)=朝日新聞2018年5月12日掲載
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