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「賢者ガルシアロブレス伝」書評 長期ビジョンを持った外交官

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2015年06月28日
賢者ガルシアロブレス伝 国連憲章と核軍縮に取り組んだ外交官 著者:木下 郁夫 出版社:社会評論社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784784511228
発売⽇: 2015/05/25
サイズ: 20cm/247p

賢者ガルシアロブレス伝 [著]木下郁夫

 中南米はなぜ非核地帯となり得たのか。第2次大戦後、米ソの核軍拡が影を落とす冷戦期の世界情勢のなか、国連など国際会議の場で1人の外交官が優れた外交手腕を発揮し、世界の核軍縮の行方に影響を及ぼした。「核大国の首脳はヒロシマを訪れることを義務とすべき」。本書は1982年のノーベル平和賞受賞者、メキシコの元外相アルフォンソ・ガルシアロブレスの「理想の国連憲章を求めた人生」を、知的で粘り強い駆け引きなどを紹介しつつ伝える。著者は唯一の被爆国である日本の対外政策の姿勢に疑問を抱く政治学者。核軍縮どころか核拡散が懸念される今日、創造性と構想力、長期ビジョンを持った外交官が必要との思いが伝わる。
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 社会評論社・2376円