桐野夏生「抱く女」書評 「政治の嵐」直後の女子学生
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2015年08月09日
抱く女
著者:桐野 夏生
出版社:新潮社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784104667048
発売⽇: 2015/06/30
サイズ: 20cm/284p
抱く女 [著]桐野夏生
1972年2月、浅間山荘事件以降、学生運動は泥沼化し、吹き荒れた「政治の嵐」の残滓(ざんし)は「ノンポリ」と呼ばれる学生にも傷痕を残している。その年の9月から12月を、20歳の女子学生直子はどう生きたか。意味もなく雀荘(じゃんそう)に通い、タバコを吹かし、ジャズ喫茶でバイトする。危うい恋愛に人生をかけ、家を捨てる。いや、もっと大事な何かをも、捨てたのではないか。
まるでノンフィクションのようなリアルさで迫ってくるが、同時に、「これはもう歴史なのだ」との感慨も襲ってくる。
「自分は、何でこんなどうしようもない時代に生きているんだろう」と直子は思う。その時代が丸ごとよみがえってくる。
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新潮社・1620円