「樺太(サハリン)が宝の島と呼ばれていたころ」書評 北端の地の貴重な記録
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2016年01月10日
樺太が宝の島と呼ばれていたころ 海を渡った出稼ぎ日本人 (SQ選書)
著者:野添 憲治
出版社:社会評論社
ジャンル:社会・時事・政治・行政
ISBN: 9784784515448
発売⽇:
サイズ: 19cm/255p
樺太(サハリン)が宝の島と呼ばれていたころ [著]野添憲治
かつて「宝の島」と呼ばれた樺太(現ロシア・サハリン)。1905~45年、北緯50度以南は日本領土だった。資源に恵まれ、出稼ぎに行った人は多いが、記録は少ない。この本は、秋田出身の18人の聞き書きだ。
冬は山でエゾマツを伐採し、春になるとニシン漁の船に乗る。1921年に樺太に渡った三浦利七さんは「ニシンが来ると、ずっと向こうから音鳴りしてくるのだもの。風が吹くような音がしてくるのだス」と振り返る。敗戦と引き揚げの苦労にふれ、「まあ、かろうじて生きてきたスな」と言う。
秋田の農家に生まれ、16歳で北海道へ出稼ぎに行ったこともある著者は「民衆の歴史は誰かが記録しないと忘れられていく」と書いている。
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社会評論社・2268円