「ウクライナから愛をこめて」書評 チェルノブイリの地の現在
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2014年03月09日
ウクライナから愛をこめて
著者:オリガ・ホメンコ
出版社:群像社
ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション
ISBN: 9784903619446
発売⽇:
サイズ: 18cm/117p
ウクライナから愛をこめて [編]オリガ・ホメンコ
情勢が緊迫するウクライナ。1月に刊行された本書は、当地の人々の直近の体温や暮らしぶりを伝えるエッセーだ。著者はウクライナ出身。東大で博士号を取得、現在は首都キエフの大学で日本史を教える。
サッカーW杯後、子どもたちが口ずさむ国歌「ウクライナは滅びず」をききながら19世紀半ばにできたこの歌に込められた独立をめぐる思いをつづったり、選ぶ楽しみがなかったソ連時代のおしゃれをつづったり。チェルノブイリ事故の時、親と離れて学校ごとに避難させられた10代の体験、ソ連崩壊により独立した後は、人々は経済的な問題を解決しなければならないのが実情で事故の話をしたがらないようだという一節には、日本が重なってみえる。
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群像社・1260円