1. HOME
  2. 書評
  3. 東北と東京という二つの定点

東北と東京という二つの定点

三浦哲郎、内なる楕円 著者:深谷 考 出版社:青弓社 ジャンル:小説・文学

価格:2808円
ISBN: 9784787292025
発売⽇:
サイズ: 20cm/287p

肉親や故郷を題材に作品を書き続けた三浦哲郎。その文学世界には郷里・青森と東京とを行き来する「楕円形」の空間が存在する。三浦の故郷を歩き肌で感じた経験を作品群の読解に結び付…

評者:朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2011年10月30日

三浦哲郎、内なる楕円 [著]深谷考

 昨年亡くなった私(わたくし)小説作家に関する評論集。書名は、東京で生きる東北人の孤独を描いた短編「楕円(だえん)形の故郷」にちなむ。三浦は東京で暮らしながら、故郷の東北・南部地方に絶えず目を向け、北の人たちの悲しみをみつめた。東北と東京という二つの定点をもつ楕円形が三浦の文学世界、と著者は考える。
 逆接の接続詞への言及も興味深い。「忍ぶ川」などごく初期の作品を除けば、三浦は強い拒絶を示す「しかし」を使わず、やわらかな「けれども」を使った。転換したのは、きょうだいを自死や失踪で失った三浦が滅びの血を受け入れ、正面から向きあう決意を固めた時期。人間味に満ちた文体の原点がここにある。
    ◇
 青弓社・2730円