- 昆虫の図鑑 採集と標本の作り方 [著]福田晴夫ほか
- 日本の昆虫1400 ①② [著]槐真史ほか
- ときめき昆虫学 [著]メレ山メレ子
- MOTHPHILIA(モスフィリア) 氷堂涼二 蛾集 [著]氷堂涼二
(1)多くの昆虫グループの代表種を、標本写真で紹介する「昆虫の図鑑 採集と標本の作り方」。昆虫の探し方や採集時の装備、ワナの仕掛け方、標本作りのコツなども丁寧に説明しています。
「採集方法も知ることができる図鑑として選びました。初めて昆虫採集をする人向けの本って、意外とないんです。本展の観覧後、できれば皆さんに昆虫観察や昆虫採集に行っていただきたいというのが願いです。展示の予備調査でアマゾン地域に行きましたが、見たくて仕方がなかったタイヨウモルフォという美しいチョウの姿を見ることができました。
私の採集道具はどちらかというとシンプルで、虫捕り網、夜の採集のためのライト類、チョウやガを入れる三角紙(紙包み)、場合によっては現場で標本を作る道具くらい。人によってはトラップ(わな)のための様々な道具やくわなどを携帯します。それぞれの虫の生態を知った上で、好む場所や出現時期と時間帯、採集方法と、あらゆることを頭にインプットしておかないといけない。本当に虫の採集がうまい人というのは、丹念に色々な方法を試して、様々な知識を蓄える。それが感覚的に出てくるのか、なにげないところで網をふるっても、ちゃんと目的のものが入っているんです」
(2)「日本の昆虫1400」は、チョウ・バッタ・セミを紹介する①と、トンボ・コウチュウ(甲虫)・ハチを掲載する②の全2巻で、計1400種を収録した図鑑。写真の大半は、生きた昆虫を白色の背景(白バック)で撮影し、自然のままの姿や色がよく分かるように工夫されています。写真などで解説されたチャートで特徴をたどっていくと、昆虫の種類や名前が識別できる「絵解き検索」も掲載。
「最近は生体を『白バック』で撮るのが一つのはやり。チョウや、特にガの仲間は顕著なんですが、標本は翅(はね)を広げた状態で作成するので、止まっているときの姿が分からないんですよ。類書はあるんですが、この本はいろいろなグループが2冊で1400種も載っていて、値段も手頃です。絵解き検索が便利で、サイズもコンパクトなので、私も観察会の時には必ず持って行きます。
色々な虫を採集して調べていると、明らかに名前がない新種が出てきます。新種を決めるときには、必ず標準にする1個体の標本『ホロタイプ』が必要なんです。今展ではコガネムシの仲間で、日本で一番大きな甲虫『ヤンバルテナガコガネ』の、世界でひとつのホロタイプ標本を初公開します。破損を心配して、管理担当者がいやだなぁと出し渋るほど、貴重なものなんですよ」
(3)「ときめき昆虫学」は、秋田犬「わさお」の名付け親としても知られる、文筆家の著者が書いた昆虫取材記。研究者ではない、虫好きの目線でつづられるエッセーには、「いいじゃん、鳴く虫いいじゃん」など、等身大の言葉が並びます。
「旅のエッセーに虫の要素を加えたような内容です。僕ら研究者が書くと虫のことばかり書いてしまうことが多いのですが、こういう人に会ったとか、こんな面白いことがあったと、楽しく読みやすく書かれています。どこかで興味をそそることがあると聞けばフットワーク軽く駆けつけたりと、いい意味でかなり暴走しているところも面白い。最近はSNSの普及からか、虫好きな女性の存在がだんだん見えてきた実感があります。昆虫を愛する人の熱を感じるのに、すごく良い本です」
(4)ガを題材にした擬人化イラストとマンガを掲載した「MOTHPHILIA氷堂涼二 蛾集」。翅(はね)の模様をした衣装を着たような、実在するガの擬人化キャラクターを、図鑑形式で紹介する「蛾萌え本」です。
「著者は自身が好きなガに対する、広く言うと昆虫に対する新しい入り口を作りたいという思いを持つ方。キャラクターから入って、昆虫にたどり着くのもひとつの方法。全てが擬人化されているので、虫の姿そのものが苦手な人でも見ることができます。著者は元々ガが好きではなかったんですが、好きになった経緯を実体験の中から書いています。虫がモチーフのアート作品も掲載されていて、実は色んなところに入り口があるよというエッセンスがちりばめられています。ここまできたら本物の虫の写真が見たい、という気持ちになったら、この本のカバーを外してみてください」
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ツノゼミ ありえない虫 [著]丸山宗利
人間の想像力を軽々と超える、奇抜すぎる造形をした「ツノゼミ」138種をカラーで掲載。セミではなく、カメムシ目の昆虫で、体長1センチに満たないものがほとんどだとか。ヘリコプターの回転翼のようなツノを持った「ヨツコブツノゼミ」は、今展でも紹介されます。ただ、なんのためにコブ状のツノがあるのかは「全く分かっていません」(神保さん)。昆虫の奥深さをその目で。