「好書好日」では、絵本や図鑑といった、ギフトにも最適な本の紹介に力を入れています。では、多感なお年頃の中学生にはどんな本を贈ればいいのでしょうか。夏休みを前に、思春期だからこそ読んでほしい、おすすめの物語を集めてみました。読書感想文の課題にもいかがでしょう。
- あと少し、もう少し(新潮文庫)
- 14歳(小学館文庫)
- エイジ(新潮文庫)
- Aではない君と(講談社文庫)
- 市立第二中学校2年C組 10月19日月曜日(講談社文庫)
(1)あと少し、もう少し
「走る」小説には名作が多いのですが、これもその一つ。中学校駅伝の県大会を目指し、寄せ集めの男子6人が走ります。順番に6人の走りと心模様をつないでいくだけの物語なのに、次第に手は汗を握り、目が潤んできます。各区ごとに視点人物を変え、それぞれから6人の個性を浮かびあがらせる構成が見事。これぞ青春小説!
(2)14歳
ある年に生まれた子が14歳になったとき、人類は滅亡する。鳥の頭をもつ天才科学者の予言を受け、各国は地球脱出計画を進めるが頓挫、地球は悪夢のような光景に覆われます。時空を超えたイメージが乱舞する難解極まりないSF巨編ですが、宿命に抗して生き延びようとする子供たちの奮闘ぶりが読みどころです。
(3)エイジ
思春期の揺れる心情を描かせたら当代随一の書き手による少年もの。郊外のニュータウンに住む中学2年生・エイジの周りで大事件が起きる。街で起きた連続通り魔時件の犯人が同級生だったのだ。ひょっとしたら自分だって……。意味もなく大人たちに反発しがちな思春期少年のイライラ感やモヤモヤ感をすくいとった1冊です。
(4)Aではない君と
こちらは、自らの息子が犯罪を犯した父親の話です。被害者の親の悲しみは簡単に癒えるものではないですが、加害者の親の苦悩も想像しうるものではありません。長年にわたり少年犯罪と向き合った小説を書いてきた筆者が、想像の限りを尽くして書いた渾身の一冊。中学生を取り巻く社会のありようも知ることができます。
(5)市立第二中学校2年C組 10月19日月曜日
みんな違っていいはずなのに、どこか息苦しいのはなぜだろう。どこにでもありそうな中学校の秋の1日を、同じクラス約40人の少年少女の視点から少しずつ切り取っていった群像小説です。読み進むにつれ、どこかに自分に似た人が見つかるはず。話の続きを考えるところから、「あなた」の物語が始まるかもしれません。