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「儲かりそう」より「楽しそう」で成功

『ディズニー、NASAが認めた 遊ぶ鉄工所』 [著]山本昌作

 業界平均3~8%を大幅に上回る20~25%の利益率。ピンクの壁で3K(きつい、汚い、危険)イメージを払拭(ふっしょく)した本社屋。斬新な経営で注目を集める鉄工所が、京都の「HILLTOP(ヒルトップ)」だ。成功の鍵は、経営を担う著者が徹底して進める「合理化」にある。
 しかし、この場合の「合理化」とは数字至上の「生産性追求」ではない。41年前に両親の鉄工所を手伝うことになった時、「人間をロボットのように扱う製造業の現実」に耐えられなかった。そこで「儲(もう)かりそう」よりも「楽しそう」で工場が回る仕組み作りに着手。売り上げの8割を占めていた大量生産をやめ「多品種少量生産」に舵(かじ)を切った。
 経営者としての先見性は、「職人のカン」という暗黙知を含め、受注から納品までの全工程をIT化して「24時間無人加工」を実現したこと。社員の力はルーチン作業から知的生産へと向かい、取引先は宇宙や娯楽、バイオなど世界の先端産業へと拡大した。
 成功の源には、著者の反骨精神がある。悪戦苦闘の中で業績が上向いたその時に、鉄工所の火事に遭って、生死の境をさまよったこともある。そこから甦(よみがえ)る不屈の物語が、熱をもって猛暑を制する。=朝日新聞2018年8月4日掲載