「あの小説をたべたい」は、好書好日編集部が小説に登場するごはんやおやつを料理し、食べることで、その物語のエッセンスを取り込み、小説の世界観を皆さんと共有する記録です。
今回取り上げる小説は、村山由佳『遥かなる水の音』。
久遠周(くどう・あまね)の死をきっかけに、モロッコへと旅立つ姉の緋沙子、ゲイのフランス人ジャン=クロード、幼なじみの浩介と結衣。遺灰をサハラ砂漠にまいてほしいという周の願いを叶えるべく、かつて周が旅した道のりを4人でたどっていきます。
「哀しみ」を食べる
旅の途中、仕事のトラブルで一人パリへと戻った浩介。浩介が乗ったと思われる飛行機が消息を絶ったという情報が入り、結衣は心を落ち着かせるべく、モロッコの旧市街へと繰り出します。その道中で結衣が買った「ものすごく甘そうなドーナツ」を作ってみました。
残った小銭でミネラルウォーターのボトルと、ものすごく甘そうなドーナツを二つ買った。
まだ確定したわけではないけど、「浩介が死んでしまったかもしれない」。そんな絶望的な哀しみという苦い思いを打ち消すために、結衣は“ものすごく甘い”ものを求めたのかもしれません。
繊細というよりは、素朴で武骨なドーナツかなということで、サーターアンダギーのようなものをイメージ。砂糖たっぷりのグレーズをかけて、ものすごく甘そうに仕上げてみました。
食べてみると、見た目とは裏腹にそんなに甘くはありません。でも、カロリーは心配になりました。