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「50歳の衝撃 はたらく僕らの生き方が問われるとき」 一線離れ、自分を変える折り返し地点

50歳の衝撃 はたらく僕らの生き方が問われるとき [著]山本直人

 会社人間の50歳とは「じんわりと将来への選択肢は少なくなり、未来への可能性は狭くなっている」自分を自覚する節目である。今、企業社会でアラフィーといえば、悪名高きバブル入社世代だ。「ちゃらい」だの「使えない」だの、いろいろ言われてきた彼・彼女らも、職場の一線から離れる時期を迎え、「『これからどう生きる?』という人生の課題」を改めて突きつけられている。
 本書には、著者が見聞きした事実をもとに25のストーリーが描かれる。働き方改革に適応できない人、派閥トップの失脚に巻き込まれた人、燃え尽きかけた人など、いずれもサラリーピープルなら身に覚えのある「あなたに似た人」の話が、淡々と紡がれていく。その中身は「プロジェクトX」的なドラマとは対極にあり、また、はた目にはタイトルほどの「衝撃」もない。
 しかし登場人物たちは、他者にとってはささやかな事件を契機に「様々な関係の中で、頼り、甘え、自分で考えることを怠った」自分を変えていこうとする。
 「100歳社会」の到来を信じるなら、50歳はまだ折り返し地点。ここで謙虚に自分の棚卸しができれば、まだ先は開けていく。と、思いたい。清野由美(ジャーナリスト)=朝日新聞2018年9月8日掲載