年明けに新作が出せるかどうかという瀬戸際にもかかわらず、アニメにハマってしまいました。「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」です。
現在45歳。子どもの頃にガンダムシリーズを楽しむことができず、自分とは無縁の世界だと決め付けていたのですが、きっかけになったのは、MISIAの楽曲「オルフェンズの涙」です。
2015年に発売されたこの曲を、ある歌番組で聴き、感銘を受けました。オルフェンズとは孤児たちという意味で、アニメのエンディングテーマとして作られたと知り、この世界観を持つ物語にぜひ触れてみたいと思ったのです。
とはいえ、ガンダムか。そんな気持ちで、1期分・全9巻のDVDのうち、1巻だけ借りたのですが、1話目から、不遇な環境に生まれ育った少年たちの物語に引き込まれ、その日のうちに、残りをすべて借りに行きました。
DVDを入れ替えるごとに、罪悪感が込み上げてきます。こんなことをしている暇はないんじゃないの? 自分の仕事を棚に上げて、逃避しているだけじゃないの? 頭の中からそんな声が聞こえてきても、止めることができません。
結局、一夜で全巻見終えてしまい、明け方、感動の気持ちをいっぱいに、心地よい眠りにつくことができました。
2期も見たいけど、仕事を終えた後のご褒美にとっておこう。そう心に誓っていたのに、翌日、一緒に見ていた旦那さんが、当然のように2期を全巻借りてきて、誓いはあっさりと破られてしまいます。それでも、後悔はありません。終盤の展開を自分ならこうしたのに、という脳内補正を含めて、物語の世界観を十分に堪能することができました。
敬遠していた分野でこれほどハマれる物語に出会えたということは、世の中にはまだまだ、自分が出会えていないだけのおもしろい物語があるということで、次はどんな出会いが待っているのだろうと想像するだけでワクワクしてきます。
その前に、仕事も頑張りますが……。=朝日新聞2018年10月29日掲載
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