1. HOME
  2. インタビュー
  3. アスリート燃え萌えマンガ
  4. 「ハンター」の念能力、やりに込めてます! 陸上やり投げ・新井涼平さん(前編)

「ハンター」の念能力、やりに込めてます! 陸上やり投げ・新井涼平さん(前編)

文:熊坂麻美、写真:樋口涼

「なんとなく」努力していないのがいい

――『HUNTER×HUNTER』の好きなところ、きっとたくさんありますよね。

 そうですね。いろいろ複雑なので全部は言えないかもしれません(笑)。僕は最初はアニメから入って、兄が単行本を持っていたのでそれで漫画も読み始めました。たしか小学校3年か4年のときです。

 読み始めた頃は、森の中で育った主人公のゴンがハンターを目指して成長していくストーリーが単純に面白くて。簡単に強くなるのではなくて、仲間と一緒に努力していく過程があるので、子供心にも気持ちが入りやすかったんですよね。しかも、その努力に無駄がないというか、ハンターになるためとか何かを攻略するためとか誰かを倒すためとか、修業の目的がいつも明確なんです。「なんとなく」努力していないのがいいと思いました。

 あとは、敵キャラも含めて、それぞれのキャラクターがすごい作りこまれているので、戦いだけじゃなくて、人間性の部分でも読みごたえがあります。ひとつひとつの設定も細かすぎるし、伏線もめちゃくちゃ張ってあるから、何度か読み返してやっと理解できることも多いですけど。

――この作品は休載が多いことも特徴ですよね。そこは気にせず、待ち続けようと?

 最初は毎週のように気にして次の連載をチェックしていたんですけど、出ないので(笑)。だんだんチェックする間隔があいて「そういえば、まだかな?」みたいな感じになりました。やっぱり続きが気になるから、読むのをやめようとは思わないですね。

 『HUNTER×HUNTER』って、展開が突然変わったり、急に「誰?」みたいなキャラが出てきたりすることがわりとあるんです。でもそうやって「どこに話がずれたんだ?」という展開になっても、だいたい先でつながっていて、伏線の回収もそうですけど、〝答え合わせ〟みたいな面白さがあるんですよね。答えがわからないときはネットでほかの人の解釈を見たりもしますけど、それでさらに混乱することもあったりして(笑)。

 休載つながりでいえば、「ジャンプ」の連載と単行本の絵が全然違うのも、この作品ならではだと思います。連載のほうは、待っている読者のために絵が粗いままでも出していて、それが単行本ではきれいな絵になっている。白かった背景がちゃんと描きこまれていたり、ファンとしては絵の違いを見るのも楽しいです。

行き着く先は基礎や精神的な部分だと教えられた

――好きなキャラクターを教えてください。

 ネテロ会長です。ネテロ会長はハンター協会の最高責任者。「念能力者」としても最強レベルなんですけど、修業のシーンに衝撃を受けました。自分の技と体を磨くために、毎日1万回、自分を育ててくれた武道に感謝しながら正拳突きをするんです。それを何年も続けて、やがて音を超える速さを手に入れます。やっぱり行き着く先は、基礎や精神的な部分なんだなと、このシーンでつくづく感じましたね。自分もやり投げの技術を高めるために、そういうことをやっていかなきゃなと。

――それはたとえば1日1万回の投擲、みたいなことですか?

 100回なら投げたことはあるんですけど6時間くらいかかったので、1万回となると……。それも感謝のお祈りをしてからなので、時間がかかりすぎますね(笑)。これを実際にやるのは難しいんですが、でもネテロ会長が正拳突きをしている姿は自分の中にいつもあって、たとえば一日中ひたすら体幹トレーニングをしたりイメトレをしたり、そういう基礎を大切にする意識が強くなりました。

「HUNTER×HUNTER」28巻、P134-135より © POT(冨樫義博)1998-2018年

――ネテロ会長といえば、キメラ=アントの王との戦いは壮絶でした。

 王に力及ばないと感じていながらも、ハンター協会のトップとして戦わざるを得ない状況だったと思います。この戦いの中で「敗色濃い難敵にこそ 全霊を以て臨む事‼」というネテロ会長のセリフがあって、自分より強い相手と戦える喜びと、そこに立ち向かう覚悟が感じられてかっこよかったですね。

 最後、ネテロ会長は自分の心臓をついて自爆しますが、なんとなく、また戻ってくるような気がするんですよね。この作者なら、そういうことをふつうにやってくれるんじゃないかと、どこかで期待もしています。

――この作品は「念能力」も重要なポイントです。人間が体から発するオーラ(念)を自在に操ったり増減させたりする能力ですが、使えたらいいなと思うことはありますか?

 それは毎日、思っています。自分は「念=意識」だと思っていて、意識を一点に向けることは集中力にもつながるので、競技でもとても大事な部分です。やり投げは、やりにどれだけ力を伝えられるかで飛距離が変わってくるので、いつも指先に「念」を込めてリリースするようにしています。

 よく飛んだら「お、今のは念が出たかな?」とか(笑)。やりに念を宿して遠くに飛ばすということは、6種類ある念能力のうちの「放出系」ですかね。いや、単純に「強化系」かも? そんな風に、できるだけ楽しんで練習することも自分は大事にしています。

 でないと、きつすぎて毎日やっていけないんです。念能力者になった自分を想像しながら、『HUNTER×HUNTER』の新刊を心待ちにして、毎日頑張っています。

>後編「〝修業〟を積んで、目指すは90m超え」はこちら