19世紀末、「アール・ヌーボーの化身」とうたわれた米国の女性舞踊家ロイ・フラー(1862~1928)は知名度の高さでは、後発の女性舞踊家イサドラ・ダンカンに席を譲る。山本順二著『ロイ・フラー 元祖モダン・ダンサーの波乱の生涯』(風媒社・2160円)は回想記を元に忘れられがちな偉大な舞踊家に再び光を当てた。
曲線を描いて動く衣装に色彩照明をあてる舞踊姿は、闇に幻想的に揺れる生命体のようだったという。「光のダンス」「サーペンタイン(蛇状の)・ダンス」とも呼ばれ、象徴派詩人マラルメ、画家ロートレックら世紀末芸術の申し子も心酔した。
日本とも縁が深い。「日本から来たものにはいつでも大変興味がありました」などと回想記も引用。1900年のパリ万博などを通じ、女優貞奴(さだやっこ)や花子を見いだして欧州の舞台で活躍させた逸話も紹介する。ダンカンとの確執では、両者の言い分に目を配る。世紀末から「レザネフォル(狂乱の時代)」を駆け抜けたフラー。その足跡はやけどしそうなくらい熱い。(米原範彦)=朝日新聞2018年11月17日掲載
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