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〈オススメ〉稲葉振一郎+小泉義之+岸政彦〈著〉「立岩真也を読む」

 障害学・生存学に取り組み、一昨年62歳で病死した社会学者の立岩真也。その最初の単著『私的所有論』(1997年)を3研究者が語った。

 出発点は70年代に始まる重度身体障害者らの生活自立運動への関心だ。女性の中絶の権利と、障害者の生の肯定は両立できるか。自由と平等は同時に達成可能なのか?

 立岩は「素朴で壮大な問い」(岸政彦)に愚直に向き合ったが、「分配する最小国家」などの議論には困難もあったと稲葉振一郎。理論家としての仕事は支持者も含め「理解されてこなかったところ」(小泉義之)があるという。

 忌憚(きたん)のない評の一方、3氏は深い敬意を示す。「私は思考を徹底させて隘路(あいろ)に入ってしまった思考の方を支持する」。そう書いた社会学者の軌跡をもっと知りたくなった。=青土社・2420円(藤生京子)=朝日新聞2025年53日掲載