借りたお金を返すのは当たり前。そんな常識が必ずしも通用しなかった中世で、何度も出された借金を帳消しにする法令と、その末路を解説する「徳政令 なぜ借金は返さなければならないのか」(講談社現代新書、本体880円)を書いた。
室町時代の徳政令は、当初は借金に苦しむ庶民には歓迎されるが、次第に経済活動を不安定にし、人の心もむしばみ、忌み嫌われる存在になる。徳政令の変遷を追うだけでなく、その抜け道を探そうとする庶民の知恵なども描いた。「許されるなら、借金を返したくないのが人間の本音。それを現実にした法令から、中世経済の実態を知って欲しい」
日本中世史が専門。研究を始めたころは人気がなく、研究者も少ない分野だった。研究の方法論から考える必要がある中、財政面から歴史を眺める手法で中世社会の復元に挑んだ。「歴史学という学問に魅せられ、ここまできた。50歳を前に、歴史学の魅力を広く伝えたいという思いが強くなった」と話す。次は戦国武将の明智光秀に関する自身の研究を1冊にまとめたいという。(渡義人)=朝日新聞2018年10月31日掲載
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