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「貧困を救えない国 日本」など、今週注目の新書4選(朝日新聞2018年12月1日掲載)

『貧困を救えない国 日本』 

 「子どもの貧困」が話題になって10年たっても、無理解や自己責任論によるバッシングが絶えることはない。この現状は何に起因し、どうすれば打破できるのか。データを分析し支援制度を検討する研究者の阿部と、貧しさからメンタルを病むまでに追いつめられる人々を当事者目線で取材するライターの鈴木が、細部にわたって語り合う。
★阿部彩・鈴木大介著 PHP新書・994円

『「武国」日本』

 20世紀前半には、日本は戦に強い国だという自意識が支配的だった。中世までの「神国」から、武士階級が実権を握ることで16世紀末には「武」の国へと変化。その過程で、実際には失敗だった秀吉の朝鮮出兵が江戸時代には日本が外国に「武威」を見せつけた事件として語られ、19世紀末には武国精神に基づく学校教育で国民に浸透した。国家意識の変遷を各時代の史料でたどり、伝統を守る以前に、「伝統」とは何かを問い直す必要性を説く。
★佐伯真一著 平凡社新書・1026円

『中国経済講義』 

 中国の経済統計は信頼できるか、不動産バブルを止められるのか、人民元の国際化は経済にどんな影響を及ぼすのか、共産党体制での成長は持続可能か……などについて解説する。中国の政治経済体制は、権力が定めたルールの「裏」をかく、民間企業の自由闊達(かったつ)さを許容するだけでなく、それがもたらす「多様性」を体制維持に有用だと利用してきたように思えると経済学者の著者はいう。
★梶谷懐著 中公新書・950円

『サバイバル英会話』

 オンライン予備校講師の実践を通して、英会話力習得の学習法を紹介。前半はマインド編、後半は実践的トレーニングのテクニック編。雑談の有効性、OKの多様な英語表現、言葉に詰まったときの切り返し方、リズムを体得するには文法力が役立つ……など、話せるようになるまでの見取り図を示し効率的な上達法を指南する。
★関正生著 NHK出版新書・842円