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新書ピックアップ(朝日新聞2018年12月15日掲載)

『除染と国家』 

 原発事故による放射能汚染に対し、国は土木工事による巨額の「除染」事業を行ってきたが、汚染土の保管・貯蔵をめぐる責任の所在は明らかではない。非公開のワーキンググループで、汚染されたがれきや土を「資源」として「再利用」する計画が進められ、開示を求めて出てきた資料から発言が削られているなど、ひそかに事態が進行している。毎日新聞記者の著者が警鐘を鳴らす。
★日野行介著 集英社新書・929円

『老いと孤独の作法』

 長い余生を送るようになった日本人は、死からも目を背けてはならない。自らの死を意識するようになった宗教学者が、退位をめぐる天皇のメッセージから死のプロセスを凝視する日本古来の死生観を受け取り、司馬遼太郎の仕事の底流に文明の無常を読み解く。鴨長明ら先人からも、危機や動乱の時代を柔軟に生き抜くライフスタイルを学ぶ。
★山折哲雄著 中公新書ラクレ・929円

『社会主義リアリズム』 

 社会主義リアリズムの本質は「芸術を全体主義的な党=国家の権限下に置き、その目的に服従させる公認教義の地位にあった」という。それはどのようにつくり出され、美学的内容はどう定義されていたか。また、ソビエトと共産主義の国の文学と芸術の発展にどのような影響を及ぼしたのかなど、熱狂から終息までをロシア文学翻訳家が論じる。
★ミシェル・オクチュリエ著 矢野卓訳 文庫クセジュ・1296円

『指導者の条件』

 栄冠に輝くアスリートのそばには、優れた指導者がいるものだ。スポーツなどを取材するノンフィクション作家が、伝説的な指導者24人の言葉や極意を紹介する。「自分でわかるはずだ」(ボクシングの名トレーナー松本清司)、「骨は俺が拾ってやる」(元ラグビー日本代表監督の大西鐵之祐)……。技術やメンタルの強化以上に、指導者と選手たちとの「勝敗を超えた信頼」が肝要と説く。
★黒井克行著 新潮新書・799円