人が徐々に他の生物に変わってしまうという奇病が流行する時代。鳥になる者、狼(おおかみ)になる者など、種類はさまざまだ。主人公も発症し、少しずつパンダになりつつあるが、まだ初期段階。見習いの探偵として働いていて、仕事の依頼を通じ、同じ病を抱える人々と次々に出会っていく。
治療法は見つかっておらず、自分がいずれ完全に動物と化し、人としての意識も記憶も、他人とのつながりもすべて失うという現実が、ひたひたと迫ってくる。恐ろしく切迫感のある設定だが、実際に描かれるドラマは、どこかほんわかムードでコミカルだ。不治の病に向き合って生きる者の日常が、独特の距離感で軽妙に描かれ、そのことがかえって強く心に響く。
自分が動物になってしまう。いつか人でなくなってしまう。でも、その「人」とは、そもそもなんだろう。どの一線を越えたら、人ではなく動物なのか。たとえば、人扱いされていない人々は、どこまで人といえるのか。悩み多き人にとっては、人なんてものに閉じ込められているより、いっそそこから解放された方が幸福ではないのか? 現代の多くの問題に結びつきそうな問いかけが、読後に頭の中をかけめぐった。=朝日新聞2019年1月19日掲載
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