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新書ピックアップ(朝日新聞2019年1月19日掲載)

『巡礼ビジネス』 

 副題は「ポップカルチャーが観光資源になる時代」。日本を訪れる海外からの観光客は年々増加。SNSの情報発信に各地がしのぎを削る中、観光社会学者の著者が注目するのは、アニメ・マンガ・ゲームなどの物語のゆかりの地を訪ねる「聖地巡礼」だ。“巡礼者”たちの行動原理、地域住民による取り組みの成功例、政策としてのコンテンツツーリズムなど、地方・地域活性化のヒントにもなるユニークな事例を紹介する。
★岡本健著 角川新書・929円

『ルポ 中年フリーター』

 就職氷河期に非正規雇用を余儀なくされた若者の多くが、今なお不安定雇用から抜け出せずにいる。バイト三つを掛け持ちしたり、結婚を諦めたり。中年フリーターの厳しい現実を、統計資料とあわせてリポート。行政の先駆的な雇用対策や、人材育成と雇用継続に力を入れる企業も紹介し、救済の糸口を探る。
★小林美希著 NHK出版新書・842円

『外国人が見た日本』 

 明治期から現代までの150年を、日本を訪れた外国人たちの視線と、外国人観光客を招きいれた日本の対比で描きだす。海外で出版された日本の旅行ガイドをひもとけば、外国人観光客の興味・関心が見えてくる。また、外国人に人気のスポットとなり景観が変わっていった地域もある。本書は日本「再発見」の旅でもある。著者は旅行ガイドブックの元編集長。情報量に圧倒される。
★内田宗治著 中公新書・950円

『母の教え』

 グローバルな視座で世界を見つめてきた政治学者の著者は、都会を離れた静かな生活を送りつつ、人との交わりや食の大切さを語っていた母の言葉を反芻(はんすう)する。朝鮮半島から日本に渡った両親のもとに生まれ、「人生を生き尽くした」母の姿を通して「どんな場所も故郷になる」と考えるに至った。歴史の分断と母の一生、そして息子を失った喪失感と向き合う境地に至る思索がつづられる。
★姜尚中著 集英社新書・907円