ブルボン小林『ザ・マンガホニャララ 21世紀の漫画論』(クラーケン・1620円)は、週刊文春で10年続いた漫画評の2013年から5年分を収めた。話題作が次々に出る漫画の世界。過去の名作を絡めるなど迷子になりがちな読者の道しるべだった。
どれを、だけでなく、どう読むか、に発見がある。オカヤイヅミ『いのまま』なら「どんな料理もその調理過程で『とりとめのない』思考を呼ぶ。作者はその思考もまた料理の一部とした」。『美味しんぼ』の山岡だってフライパンを振る間も何か考えているはずだ、と言われると、なるほど! 両方の調理シーンを確認したくなる。
厳しい評も。小説家・長嶋有でもある筆者は批評に「しばしば怒り心頭」だと明かしつつ、ジャンルの豊かさには感想だけでなく評が必要だと訴える。「その評はなるたけ、ふざけていないといけない。あるいは面白おかしかったり、無茶(むちゃ)だったり、蛮勇をふるったものだったりしないと」。評自体に読む喜びがあり、新旧の漫画もより楽しめる。まさに豊かさだと思う。(滝沢文那)=朝日新聞2019年1月26日掲載
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