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一気にブルガリア昔話の旅へ

「金の鳥」

 まばゆく幻想的な表紙で、一気に異国へさらわれるブルガリアの昔話絵本。でも、文も絵も日本人による作品です。
 王の命により金の鳥を探しに旅に出た3人の王子。兄2人はずるくて怠け者、正直で賢いのは末息子というのは昔話のパターンですが、末の王子もつい欲望に負けたり油断したり。空飛ぶ馬やクルミの殻に入った花嫁衣装など、ときめくアイテムで苦難を乗り越えます。東西の文化が交わり、複雑な民族の歴史をもつ国のしなやかな昔話。白黒の版画絵本で海外デビューした画家の、日本初の絵本です。あでやかで品のある色感、大胆な構図に導かれ、読み応えのある物語に引き込まれます。繊細な描き込みで、長い旅路も飽きさせません。(絵本評論家・作家 広松由希子さん)

「ゆかいな床井(とこい)くん」

 6年生になった暦の隣には、人気者の床井君が座っている。小柄な床井君は下品な話もするけれど、背の高い暦を「デカ女」と呼ばずにうらやましいと言ってくれる。2人と、同じクラスにいる多様な子どもたちの1年間を描く短編集。楽しく読んでいくうちに、この2人と一緒に読者も「別の見方」ができるようになるかも。(翻訳家 さくまゆみこさん)

「Michi」

 男の子が歩いています。国も時代も限定できない不思議な場所。たどっていくのは未知なる世界に続く道。想像力一つで、誰でも自由に楽しむことができる文字なし絵本。みんなが一つの答えを求めたがる現代社会において、自由な発想力こそが、きっと自分の味方になってくれるはず。感じるままに楽しんで。(丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん)朝日新聞2019年1月26日掲載