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「ぼくをグレーってよんで」ほか子どもにおススメの3冊 違和感、受けとめる心の対話

「ぼくをグレーってよんで」

 冬になるとパパとスケートリンクを作るのは、毎年変わらない、ぼくとパパのきまり。でも今年は、なにかがちがう。

 雪の中、例年と同じように作業しながら、ぼくは自分の抱える違和感をパパに伝えようと言葉を探る。最初は、親友のゼナが女子のお泊まり会に呼んでくれなかったこと。自分がなんなのか、どんな人間になりたいのかわからない不安……本当に言いたいことがなかなか伝わらない。でもパパは耳を傾ける。

 ジェンダーアイデンティティーに悩む子どもと、それを受けとめる家族の、心を開いた対話が丁寧に描かれる。作家の父とシンガー・ソングライターの息子が自身の体験をもとに考え、共作で送るメッセージ。児童書は初めてという画家の、主人公と読者の心の変化に添う構図展開も、あたたかく好もしい。

 「ちくちくするセーターを着てるみたい」だった名前を脱ぎ、氷上を滑るぼくの解放感。スケート後のホットチョコレートの安心。変わることを受けとめる変わらない関係は、トランスジェンダーに限らず、不安を抱く子と家族の励みになるだろう。【絵本評論家・作家 広松由希子さん】

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 アンドリュー・ラーセン、ベルズ・ラーセン文、タルーラ・フォンテーヌ絵、石井睦美訳、光村教育図書、1760円、小学校中学年から

「どらごんごんどら」

 どらごんごんどらはどんぶらどんぶら、七福神をのせて旅に出る。目指すは宝島。個性豊かな神様たちがそれぞれ選んだ宝物と、どらごんごんどらが向かうのは……。

 わらべうたを思わせる懐かしさのなかに織り交ぜられる、モダンな言葉にハッとする。心地のよいリズムにのってただよう和の波間に、ビビッドな洋が効いていて、心が踊る。金色の表紙に、美しくまばゆいどらごんごんどらの群れ。幸せになるように願いが込められた七福神たちの宝物と祝賀。たくさんの子どもたちに届けたい、めでたき一冊。【丸善丸の内本店 兼森理恵さん】

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 たちばなはるか作、偕成社、1760円、3歳から

「奇妙でフシギな話ばかり」

 アメリカの作家による不思議な物語が九編入った短編集。最初の「天使の箱」では、子どもの頃天使から箱を預かった男が、一生その箱を守り抜く。最後の「美しい最期」では、認知症で寝たきりになった祖母が、若い頃エルフを助けてやったと孫息子に語り聞かせる。一角獣ユニコーン、首無しデュラハン、オオカミ男、家事妖精ブラウニーといった、伝統的な妖精・妖怪にヒントを得た、どこかなつかしい作品もあれば、現在の体制を照射するような近未来物語もある。どの短編も、読みだしたらやめられない面白さ。【翻訳家 さくまゆみこさん】

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 ブルース・コウヴィル作、金原端人訳、橋賢亀(かつかめ)絵、岩波書店、2200円、中学生から=朝日新聞2026年1月31日掲載