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新書ピックアップ(朝日新聞2019年2月2日掲載)

『0から1をつくる』 

 副題は「地元で見つけた、世界での勝ち方」。カーリングの日本女子代表としてトリノ、バンクーバー、平昌五輪へ出場した著者。地元の北海道・旧常呂町で立ち上げた「ロコ・ソラーレ」は平昌でカーリング初のメダルを獲得、「そだねー」も話題になった。年齢も職業もバラバラなメンバーたち。チームをゼロからつくった著者の信条は、全力で楽しむ、長く地元で愛されること。チーム運営で学んだコミュニケーション術、組織論、リーダー論、地方都市の可能性などを語る。
★本橋麻里著 講談社現代新書・950円

『アンダークラス』

 永続的で脱出困難な貧困状態にある人々が、一つの階級となった。本書はデータを元に彼らの実像に迫る。アンダークラスへの経路は多様だが、若い世代ではいじめ・中退など学校からの排除が、女性では結婚で離職した後の離婚・死別が目立つ。彼らを生み出し続ける仕組みは社会に定着しているが、その不満を受けとめる政治勢力がないことが重大な課題だと指摘する。
★橋本健二著 ちくま新書・886円

『百姓一揆』 

 かつてイメージされた百姓一揆は、圧政に耐えかねた民衆がムシロ旗を掲げ竹やりを武器に蜂起する姿だったが、その後の研究で歴史像は大きく変わった。江戸時代に写本や語り、芸能など各種メディアを介して、政治はかくあるべしという理想像が広く流布し、批判のよりどころとなる政治常識が形づくられていく。地域が違っても同じパターンを持つ「一揆物語」を手掛かりに、近世民衆世界を読み解く。
★若尾政希著 岩波新書・886円

『大学大崩壊』

 大学の劣化を実感しているというベテラン教育ジャーナリストが、大学が抱える諸問題を指摘。国の定員抑制策に苦しむ私大、授業料も含めた本格的な競争を強いられる国立大、生活に貧するポスドクや非常勤講師たち……。「大学淘汰(とうた)」の時代の危機を憂う。「5年後には危ない大学が顕在化するだろう」とも。
★木村誠著 朝日新書・853円