相反する才能を組織の中で巧みに活(い)かし、コラボレーションさせる方策を説く。反響を呼んだブログの内容を物語に落とし込んだものだが、関西弁を操る犬が悩める主人公を導く設定は、ゾウの神様が登場する某ベストセラーの二番煎じか。とはいえ論旨は明快で「なるほど」と思わせる。
世の中には天才と秀才と凡人がいて、各々(おのおの)が創造性、再現性、共感性に秀でている。問題は価値判断の軸が互いに違うこと。凡人は天才を理解できずに排斥し、秀才は天才に憧れと嫉妬心を抱き、天才は凡人に理解されたいと願う、といった具合にすれ違う。
その結果、それぞれに苦しみ、天才は凡人に“殺される”。表現は過激だが、要するに、才能や可能性をつぶされるという意味。また、この関係性は組織をも蝕(むしば)む。ベンチャー創成期のように天才が組織を率いる時代が終われば、秀才が企業のトップに就く。すると天才を理解できない凡人が天才を管理することになり、イノベーションを起こせなくなるわけだ。
多数決という凶器で凡人が天才の命(創造性)を奪うという指摘は、異端の才をうまく活かせない日本社会に対する警鐘だろう。さらなる議論の糸口としたい論考だ。=朝日新聞2019年3月2日掲載
編集部一押し!
-
一穂ミチの日々漫画 都会「箱の男」(第10回) 箱に隠された家族の闇は 一穂ミチ
-
-
小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 苦節11年目の芥川賞・畠山丑雄さん「自分の小説と文芸界を信じてました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。(特別版) 清繭子
-
-
ミュージシャンたちの読書メソッド MONO NO AWARE 玉置周啓さんが選ぶ4冊 生活の中の感覚を、本が呼び起こす 李恩知
-
鴻巣友季子の文学潮流 鴻巣友季子の文学潮流(第36回) 未来を映すディストピア小説の収穫「吸血鬼」と「タイム・シェルター」 鴻巣友季子
-
インタビュー 服部真里子さん「あなたとわたしの短歌教室」インタビュー きょうだい児、摂食障害……たどり着いた「ただ楽しんでいい」短歌 清繭子
-
展覧会、もっと楽しむ 企画展 生誕100年記念「かこさとしの科学絵本」開催 各分野の研究者視点で魅力に迫る 加治佐志津
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版
-
インタビュー 湊かなえさん「暁星」インタビュー 作家として「言葉」に向き合い、新たな扉開いた PR by 双葉社
-
トピック 【プレゼント】第68回群像新人文学賞受賞! 綾木朱美さんのデビュー作「アザミ」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
トピック 【プレゼント】柴崎友香さん話題作「帰れない探偵」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社