相反する才能を組織の中で巧みに活(い)かし、コラボレーションさせる方策を説く。反響を呼んだブログの内容を物語に落とし込んだものだが、関西弁を操る犬が悩める主人公を導く設定は、ゾウの神様が登場する某ベストセラーの二番煎じか。とはいえ論旨は明快で「なるほど」と思わせる。
世の中には天才と秀才と凡人がいて、各々(おのおの)が創造性、再現性、共感性に秀でている。問題は価値判断の軸が互いに違うこと。凡人は天才を理解できずに排斥し、秀才は天才に憧れと嫉妬心を抱き、天才は凡人に理解されたいと願う、といった具合にすれ違う。
その結果、それぞれに苦しみ、天才は凡人に“殺される”。表現は過激だが、要するに、才能や可能性をつぶされるという意味。また、この関係性は組織をも蝕(むしば)む。ベンチャー創成期のように天才が組織を率いる時代が終われば、秀才が企業のトップに就く。すると天才を理解できない凡人が天才を管理することになり、イノベーションを起こせなくなるわけだ。
多数決という凶器で凡人が天才の命(創造性)を奪うという指摘は、異端の才をうまく活かせない日本社会に対する警鐘だろう。さらなる議論の糸口としたい論考だ。=朝日新聞2019年3月2日掲載
編集部一押し!
-
季節の地図 こうも読める 柴崎友香 柴崎友香
-
-
鴻巣友季子の文学潮流 鴻巣友季子の文学潮流(第39回) 「推し」と宗教、そして町屋良平「IDOL」という傑作の誕生 鴻巣友季子
-
-
わたしの大切な本 アイドルグループ「WHITE SCORPION」NATSUさんの大切な本 悩みと向き合い 探し出せた虹
-
小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 【特別版】阿刀田高さん もう小説を書かないと決めたのは狐が落ちたから。「憑かれた48年間、楽しかったねえ」小説家になりたい人が、小説家を終える人に聞いてみた。 清繭子
-
一穂ミチの日々漫画 田島列島「みちかとまり」(第13回) わくわくしてそら恐ろしくて、底知れない 一穂ミチ
-
インタビュー 槇村さとるさん「ダンシング・ゼネレーション senior」インタビュー 素敵な人じゃなくて、生身の人を描く「少女」マンガ 横井周子
-
トピック 【PR 光文社・創英社・みすず書房・ミネルヴァ書房】プレゼント 朝日新聞1面広告の本、好書好日メルマガ読者計20名様に
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版