相反する才能を組織の中で巧みに活(い)かし、コラボレーションさせる方策を説く。反響を呼んだブログの内容を物語に落とし込んだものだが、関西弁を操る犬が悩める主人公を導く設定は、ゾウの神様が登場する某ベストセラーの二番煎じか。とはいえ論旨は明快で「なるほど」と思わせる。
世の中には天才と秀才と凡人がいて、各々(おのおの)が創造性、再現性、共感性に秀でている。問題は価値判断の軸が互いに違うこと。凡人は天才を理解できずに排斥し、秀才は天才に憧れと嫉妬心を抱き、天才は凡人に理解されたいと願う、といった具合にすれ違う。
その結果、それぞれに苦しみ、天才は凡人に“殺される”。表現は過激だが、要するに、才能や可能性をつぶされるという意味。また、この関係性は組織をも蝕(むしば)む。ベンチャー創成期のように天才が組織を率いる時代が終われば、秀才が企業のトップに就く。すると天才を理解できない凡人が天才を管理することになり、イノベーションを起こせなくなるわけだ。
多数決という凶器で凡人が天才の命(創造性)を奪うという指摘は、異端の才をうまく活かせない日本社会に対する警鐘だろう。さらなる議論の糸口としたい論考だ。=朝日新聞2019年3月2日掲載
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