わかりやすい言葉、というものが求められる時代だけれど、それだけで本当にいいのだろうかとよく思う。人は、それぞれ違う人生を生き、だからこそ互いを完全に理解することはできないでいる。他人に伝わるよう自分を整理し、わかりやすい言葉で語っていけば、それは自分だけの感覚を切り捨てていくことにもなるだろう。「わからなさ」のある言葉こそ、人の奥底へ到達するのかもしれないと、私は思っているのだし、それは言葉だけでなく「文字」であっても言えるはずだ。
『作字百景』。若手デザイナー達(たち)による作字デザインを集めた本だ。ポピュラーなフォントに比べれば、読みづらさもあるけれど、それを読み解こうとする「間」が、まるで誰かの息遣いのように感じられることがある。その時、言葉はより生々しく、「誰かの声」として届いていくんだ。読みやすさに重点が置かれたものではないけれど、でもそれこそが本当の「言葉のデザイン」だと、私は思う。=朝日新聞2019年4月6日掲載
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