『あの日からの或る日の絵とことば 3.11と子どもの本の作家たち』は、東日本大震災を境に絵本の作風が変わったと感じている絵本編集者の筒井大介さんが、作家たちが抱え込んでいる思いをそろそろ聞いてみてもよいのではないかと感じて企画した。
32人の作家が絵とエッセーで震災後の出来事や不安、創作への思いなどをつづっている。東北の被災者というわけではないが「何も被っていないとは言えない」人々の体験談である。
生死に向き合い動物を描く気持ちが変わったという作家、里山の風景は変わっていなくても「時間の肌触り」が変わってしまったと感じている作家。日常においては「あの頃のことを忘れている後ろめたさ」や、怖いから思い出したくないけれど「忘れすぎてもいけない」と自らに言い聞かせる日々が記されている。言葉にならない部分は絵が伝える。「あの日から同じ地続きの日々を生きている」読者が思いを重ね合わせられる瞬間があればと願う編者の思いを受け止めたい。(久田貴志子)=朝日新聞2019年4月6日掲載
編集部一押し!
- インタビュー 「尾上右近 華麗なる花道」インタビュー カレーと歌舞伎、懐が深いところが似ている 中村さやか
-
- 中江有里の「開け!本の扉。ときどき野球も」 生きるために、変化を恐れない。迷いが消えた福岡伸一「生物と無生物のあいだ」 中江有里の「開け!野球の扉」 #13 中江有里
-
- コラム 三浦しをんさんエッセー集「しんがりで寝ています」 可笑しくも愛しい「日常」伝える 好書好日編集部
- 大好きだった 「七帝柔道記Ⅱ」の執筆で増田俊也さんが助けられた「タッチ」と「SLAM DUNK」 増田俊也
- 小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 【特別版】芥川賞・九段理江さん「芥川賞を獲るコツ、わかりました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。 清繭子
- インタビュー 鈴木純さんの写真絵本「シロツメクサはともだち」 あなたにはどう見える?身近な植物、五感を使って目を向けてみて 加治佐志津
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社