1. HOME
  2. コラム
  3. 滝沢カレンの物語の一歩先へ
  4. 滝沢カレンの「100万回生きたねこ」の一歩先へ

滝沢カレンの「100万回生きたねこ」の一歩先へ

撮影:斎藤卓行

「ニャーニャーニャニャニャッ」
「ニャッニャッ」

激しい猫が叫び合う争いの朝で目覚めた。
開いた窓から、外を見る。
わぁなんてさりげない争いだろうか。
オイラは視線をあっけなく室内に戻した。

ん?
オイラは誰かって?

オイラの名前は万年、ズタウオ。
ニックネームは、ズータウだ。

オイラは雪が溶けたように白い猫だ。
いつもこの風の通り道として最適な窓辺から外を眺める毎日。
いや、ただただずんぐりむっくりな幸せを味わいながら、黄昏ているわけではない。
オイラは今一番幸せを感じているんだ。
猫に生まれてよかったと、どの猫より思っているだろう。

絵:岡田千晶
絵:岡田千晶

それは、遡ること数千年前。
オイラは愉快な家庭に生まれた一匹だった。

毎日兄弟猫とオイラは川辺から山辺付近で遊んでいたが、ある日大雨と共に兄弟猫とはぐれてしまった。
「おーい、アニキぃぃ・・・・・・どこいっちまったんだ・・・・・・」

寒さの中、山辺を子猫のオイラはひたすら、兄弟を探し回った。
オイラは寂しさと雷の脅威さで立ち止まってしまった。
「寒い・・・・・・ここは一体どこなんだ?? 帰り方がもちろんわからないよ」
「お腹も減ったなぁ・・・・・・」

ゴゴゴォォォ・・・・・・。ゴロゴロゴーロ。
だが、雨は強くなるばかりで、暗闇をひたすら歩き回ったが、運悪く山辺にウロつくクロコダイルに見つかってしまいズータウはポロリと食べられてしまったのだ。
「うわぁぁぁぁ!! 助けてくれぇ!!! ま、ま、まだ死にたくナァァァァァァイ」

......ズータウはあっけない数カ月をクロコダイルによって幕を閉じた。
だが、ここからが摩訶不思議なストーリーの始まりだ。

~2年後~

雷の音の強さで、オイラは目が覚めた。
「うぅぅ~うるさいなぁ」
やたら濡れている地面に異変を感じた。

「うわわわわわわ、わわわー」
目を覚ますと、間違いなくクロコダイルに一飲みにされた山辺であった。
ズータウは、ゆっくり辺りを見渡す。
「オイラ生きている。いや、生まれ変わっている・・・・・・」

自分の身体はまるっきり変わっていた猫になっていた。
ズータウは、また地球から命をもらえたのだった。

そして、ズータウは雰囲気が変わった街並みをチラ見しながら、町に出た。
でも街並みは自分が住んでいたあの場所ではなく、全く違う街並みだったことに、戸惑った。
新しくなっているどころか少し懐かしさを感じるほどの街並みだった。
「オイラの家はもう無いどころか、こんな町見たことがない。ここはどこだ? 食べるものもないし。とりあえずここで寝るか」と電信柱から生えた草むらで一夜を過ごすことに。

夜中、やたらとカラスがなく。
うっすら目をあけると、そこにはひとりの男がズータウを見ながら立っていた。
ズータウは毛並みを逆立ちさせ、思わず「ニャウっ!」と威嚇した。
男の顔は暗くてよく見えなかったが、気付いたときにはヒョイっとだっこされ男の家に連れ帰られていた。
ズータウはどこに連れていかれるのかと、身体をブルブル震わせてじっと耐えた。

10分ほどしてついたのは、男の家だろうか。
小さいアパートの一室だった。
ズータウは里親になってくれるのかと少し安心した。

男は家つくやすぐに、あったかいミルクをくれた。
「ニャァァァ!」
ズータウは体に合わない最大の甘い声を出した。
男は微笑み、なぜてくれた。

そしてその男との生活は平和に続いていたが、とある日、いつも通り男はズータウを連れドライブに連れてってくれた。
この日は少し遠出をしようとしていたようだ。
車で高速道路を走っていたそんな中、大型トラックが後ろから完全なる突っ込み、事故に巻き込まれてしまったのだった。

ズータウと男は勢いよく外に飛び出してしまった。
そして男は崖に内臓を打ちつけ、即死してしまった。
ズータウもその男の横ではいつくばったが、しがみついた枝がついに折れてしまい、想像よりはるか遠くに流されてしまったのだった。

ながされた先には、巨大な滝があった。
その滝はダイナミックな滝で知られる名所だった為、ズータウの軽さではなんの抵抗もできずに滝に流されてしまった。
そしてあっけなくまた命を落としてしまったのだった。

ズータウの二回目の人生は終わりを告げた。
そこには、雲へすーーーーっと登る自分が、客観的に見えた。
雲の上には、先に死んだ男も見えた。
間違いなく死んだんだと確信した。

だが次の瞬間、強い光でズータウは起きた。
ズータウは暑い暑い夏の日差しの下に再誕したのだ。

その瞬間思ったのだ。
「オイラはまた生き返ったのだ」
そう、何度死んでもオイラは生き返ってしまうんだ。
と、認識したのだった。

その時、はっきりと口にした。
「死なせてくれーーーーー!」
夏の空に声は響いた。

そしてズータウはトラックしか通らない道路に自ら飛び出した。
試したかったし、死にたかったのだ。
自分の先の未来を試すために。

キィキィキィーッ。
車のブレーキ音が聞こえた。
その瞬間・・・・・・ふっとズータウは浮かび上がり、何回も何回も、生まれ変わって死ねなかった思い出たちが蘇る。

ズータウを拾ってくれて一緒に一度は天国に行ってしまった男が出てきて、ズータウに声をかけた。
「ズータウ、君は何度死んでも必ずこの地球に帰ってくるんだ。君には守るべきものがあるんだ」

・・・・・・!!!

その瞬間、目を覚ますと・・・・・・トンネルのような暗闇にいた。
「夢だったのか? いや、夢なはず・・・・・・」
なぜか身体はピンピンで元気いっぱいだがお腹が空いて身体を起こすのが重かった。
「なんだこの泥沼にハマったような気持ちは・・・・・・。歩きたいのになかなか思うように進まないじゃないか」

重い身体を起こし暗いトンネルを歩く。
すると小さい光がだんだんと近づいてくる。

「ん?? なんだか光の先が騒がしいぞ? なんの騒ぎだ?」
ズータウは外が異様な雰囲気だと気付く。
だんだんに人間の声が聞こえてくる。

「見つけたらすぐに知らせてくれー!」
「はい!隊長かしこまりました」
そんな太っちょ男たちの声が聞こえた。

ズータウは逃げなくちゃと声とは違う方向に走ろうとするが、なんせ体が重く好き勝手に走れない。
すると、「隊長、見つけました!ズータウ様です!」。
ズータウはひとりの男にダンボールを持つかのようなぎっくり腰防止のような姿勢でズータウを抱え込んだ。

「よくやった! でかしたぞ! ズータウ様をこちらのベッドへ移せ」
隊長が、そんなことを言った。
「はい! かしこまりました!」

そして人間の赤ちゃんより豪華でふっかふかな猫ベッドに移されズータウは運ばれた。
「お、おい。なんて優雅な気持ちなんだ」
とズータウは心の中でつぶやく。
そしてそそくさと馬車のような乗り物に乗せられた。
なんなんだこの世界は?とズータウは街並みに驚きが隠せなかった。

「またオイラは生まれ変わったのか・・・・・・」
そんな気持ちがズータウを襲った。
「またそして怖い思いをして死ぬ時がくるのか・・・・・・」
と悲しくなるズータウ。

馬車が着いた場所は聞いたこともない、どでかいどでかいお城だった。
そこの奥の部屋に通された。
そこには、髭が床までつくのじゃないかと思うほど長い誰よりも太っちょな男がいた。

「わぁぁぁぁ! ズータウ! どこに行っていたんだ。心配したんだぞう!!」
太っちょなもじゃもじゃ男は、ズータウを触りまくり涙を流して喜んだ。

「もしやこの男はオイラの飼い主なのか?」
と理解をしたズータウ。
この城で暮らしていたようだ。

ズータウは自分専用の広い部屋に移されてびっくりした。
そこにあった鏡に映る自分をみると、まるでこの太っちょ男のようにぷりぷりに太っていたのだ。ズータウは自分のずんぐりむっくりさに驚き身体が固まった。

どおりで身体が重くうまく走れなかったわけだ。
きっとこの城で相当甘やかせられながら生きてきたんだなと知った。

ズータウはその夜衝撃の事実を知ることとなる。
その夜、寝静まった部屋から太っちょ男たちがモゴモゴ話す声が聞こえた。

「おい、もう二度とズータウを逃すなよ」
「私の大切な愛するズータウなんだぞよ」
と太っちょ男が家来のような人たちに忠告しているのが聞こえた。

ズータウは耳のいい自分が嬉しくなった。
そのまま聞き続けていると、「はい!王様、かしこまりました!今後二度とないようにします」。
「そうじゃよ、あのズータウはただの猫ではなく、私が改良に改良を重ねた一生死なない猫なのだからな。ほかの人が手にしたら大変な事件となる」
「おっしゃる通りです。王様が一度体験したあの辛い辛い猫ちゃんとのお別れは二度と味わわせないために作り出したズータウですものね。必ずぼくたちが守りましょう」
「頼んだよ」

そう。
ズータウは、この時代から、このずっとずっと生き続けていた猫であり、一度、ここの城から足を滑らしてっぺんから海まで落ちてズータウは命を落としたのだが、ズータウを溺愛していたこの王様が国中の研究者を集め、生き返らせた者には5000000万ドルを支払うという、仕組みにまでさせて、ズータウは一生死なない猫として再び生き返ったのだった。

だが、死んでも死んでも新たな場所で生まれ変わるのだった。
あまりに長すぎる人生のために、地球の歴史が終わっても、そんな100万年前にズータウはまた再び振りもどされてしまったのだった。
ここでの出来事を忘れていたが、全ての始まりだったのだ。
地球の歴史が終わっても、またズータウはスタート地点に戻り、この王様から一生死なない体をもらってしまうという運命だったのだ。

「はい、おしまい」
ここは、とある住宅街の一軒家の子供部屋だ。

「えーママもう終わり?まだ読んでよー」
「えー? もう終わりよ。早く寝なさい」
「なんだ! また明日この本読んでね」
「わかったわよ。おやすみなさい」
「おやすみなさい」

「ほら、エリオットにもおやすみなさいは?」
「エリオットおやすみ」
「ニャー」

そう。今日もズータウはこの地球のここでひっそりと人生を終われずに苦しんでいるのだった。
ズータウの人生は伝説として読み継がれ、絵本にもなっていた。
そんなズータウが、まさか家にいるとは知らずに・・・・・・。

(編集部より)本当はこんな物語です!

 カレンさん版のズータウと異なり、オリジナル版のねこには名前がありません。「りっぱなとらねこ」の主人公は、あるときは王さまのねこ、またあるときは船のりに飼われ、サーカスの手品つかい、どろぼう、ひとりぼっちのおばあさん……と、別の飼い主のもとで死んでは生まれ変わります。飼い主たちは一様にねこの死を悲しみますが、当のねこはそうではありません。どの飼い主のことも大嫌いだったのです。

 あるとき、生まれ変わったねこは飼い主のいない、のらねこになっていました。自分のことが大好きなねこは、ねこ仲間を前に「おれは100万回もしんだんだぜ」と自慢します。すり寄ってくるねこたちに、満足げなねこでしたが、ただ1匹、うつくしい白いねこだけが見向きもしてくれません。自意識過剰であるほど、つれないそぶりをされると気になるのは猫も人も同じ。とらねこは白いねこに猛烈なモーションをかけた後、プロポーズ。2人(2ねこ)は多くの子ねこに恵まれ、幸せな人生を送ります。しかし白いねこは次第に年老いていき、そして……。

 物語の解釈は人それぞれでしょうが、「ふだん身近にあるのに気づかない」ことを気づかせてくれる、そんな絵本です。