整然とコマは並ぶが何やら物騒だ。観衆は迷惑をこうむりながらも、高揚している。ミステリアスな「人」や「物」が、途切れなくステージ上に現れては、すぐ去っていく。「実演」とも「芸」とも、全編を総点検する巻末解説(これもケッサク!)で著者は書くが、一体何が披露されているのか、不明である。不明であるが、堂々としている。直線的に進行する物語でありながら、横道へ迷い込むような感覚を、読者は味わう。
「ネオ漫画」という独自のジャンルをたった一人で背負って立つ、著者の3年ぶりの新作。キャラクターに感情移入しようにも、容赦なく弾(はじ)き返されるだろう。感情は、お前さんの胸にしまっとけ。そう読者に語りかけるようなマンガなのだ。類型的な「感情」に惑わされず、ひたすら見ることが推奨される世界観。ワーワーとかドドドドなど、オノマトペのオンパレードだが、「パラパラ」だけは見当たらない。パラパラ見ていたら、この作品は見えてこないだろう。混迷を深める現実世界を、自分の力で「見つめる」ためのトレーニングに最適な1冊。=朝日新聞2019年4月20日掲載
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