2010年代、統一地方選挙は大きく変容した。
以前の統一選を振り返ると、いわゆる前半戦では茨城県と沖縄県を除く都道府県が、知事選挙か議会選挙のどちらかに参加していた。ところが、11年に東日本大震災の影響で岩手・宮城・福島の3県が離脱し、以前から議会選挙は違うタイミングだった東京都が石原慎太郎知事の辞任で離脱した。
大手メディアが集中する首都の選挙であり、「目玉」扱いが続いてきた東京都知事選挙が外れたことは、統一選に対する注目の度合いを変えただろう。大阪維新の会が勝ち続ける大阪の選挙、特に今回の「クロス選挙」は注目されたが、都知事選の代わりというより、東京から見て妙な現象が起きている、として消費されていたのではないか。
市区町村の選挙が中心となる後半戦が変わったのはもう少し前にさかのぼる。07年の統一選までに「平成の大合併」が行われ、その結果統一選から離れた自治体も多い。03年まで市議会の6割程度が統一選に参加していたが、07年以降4割を切っている。震災の影響も重なり、以前から少ない市町村長の選挙では1割程度である。合併等のない東京都特別区の多くは参加し続けており、これが全国メディアの関心をつなぐ縁となっているのかもしれない。
増える無投票当選
多くの自治体の離脱で統一選への関心が内実を失う中で、都道府県議会での無投票当選の拡大が特に深刻な問題として指摘される。拡大、とされやすいが実は総務省の資料によれば、15年と1991年で無投票当選者数の割合はほぼ同じで22%程度だった。それが今回の都道府県議会議員選挙では総定数の26・9%を占めることになり、新たなステージへと突入したように見える。また、市長選挙は以前から無投票当選が多かったが、比較的少なかった市議会議員選挙でも無投票が拡大していることも懸念すべき点といえるだろう。
都道府県レベルで無投票が起きているのは以前から町村部にある定数1の選挙区が多い。それぞれの地域で現職候補者が強すぎて、対立候補が出にくくなっていることには注意が必要である。人口減少の弊害として担い手不足が強調されやすいが、選挙区変更や定数削減で地域から多様な候補者間の競争が生まれる可能性を減らすという点が問題になっているのではないか。他方で、無投票が拡大している市町村レベルの議会では、単純に定数が大きすぎて候補者が足りず、競争の余地が少なくなっている可能性が高い。
制度、考え直す時期
国政では1990年代に大きな変更が行われたのに対して、地方自治体の選挙制度は、創設以降基本的に変化がない。起きた変化は、人口の変化に合わせた議員定数の変更と、都道府県・政令指定市レベルにおける選挙区定数の変更や、統一選に参加する自治体が減少するような選挙サイクルの多様化といった現状追認にほぼ尽きている。10年代を通じて統一選の性格が大きく変わる中で、地域の民意をどのように吸収するか、という観点から、地方選挙のあり方を考え直すべき時期ではないか。=朝日新聞2019年4月24日掲載