22歳から7年にわたって、百数十点のコラージュ作品を生み出した岡上淑子さんは現在91歳。青春時代を戦争の中で過ごし、終戦後は東京で、大量に流れ込んできた欧米文化に触れた。海の向こうの映画や、モード雑誌の世界に憧れる一人の若者だったようだ。
ファッションの勉強で通った学校の課題がきっかけとなってコラージュを始める。美術史も知らず、絵にも自信がなかったから、と岡上は謙遜するが、美と自由を画面いっぱいに湛(たた)えた作品からは、進駐軍が置いていった雑誌を1ページ、1ページと繰っては理想のイメージを切り抜いていく、若い芸術家の姿が思い浮かぶ。
先月終了した個展にあわせて数冊の新刊が出ているが、『美しき瞬間』は作品と岡上自身の言葉が対になっていて、読み進めると、なぜ彼女の作品が自由で強い女性を思い起こさせるのかがわかってくる。結婚を機に制作をやめたとされる岡上だが、作家として表現手法に疑問を抱き、葛藤があったことなども詩的な文章で綴(つづ)られていて、興味深い。=朝日新聞2019年5月4日掲載
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