少女たちの神話。と書くと、どこか陳腐な宣伝コピーのようだが、一読して率直にそんな感想が思い浮かんだ。学校や家庭などのありふれた日常を舞台に少女たちを描いた短編集だが、まるで神話や昔話のように幻想的で、そっけなく残酷で、象徴的な物語が収められている。その完成度の高さに驚かされた。どれも商業出版以外の場で発表された作品をまとめたもので、これが著者初の単行本となる。
描かれているのは、友人や親など身近な人間関係の中で引き起こされる、少女たちの葛藤や違和感など。生々しい現実の困難さの中で、もがき苦しむ主人公の自意識は、いつの間にか非現実との境界を越えてゆく。透明感のある絵柄で描き出される幻想的な世界の中で、美醜は表裏一体となり、清濁は混ざり合い、善意と悪意が入り交じって、読む者に突きつけられる。絵とことばもよく響き合い、想像力を強くかきたてられ、収録されている12編どれもが心に残った。
少女の自意識の世界を、徹底的に追い込んで描いているという意味では、これはまさしく「少女まんが」なのかもしれないが、むしろジャンルを越えて広く読まれてほしい一冊だ。=朝日新聞2019年6月1日掲載
編集部一押し!
-
鴻巣友季子の文学潮流 鴻巣友季子の文学潮流(第42回) アトウッド、アン・カーソン ノーベル文学賞に値するカナダの双璧詩人 鴻巣友季子
-
-
インタビュー 月村了衛さん「機龍警察 漆黒社会」人型兵器・人身売買…闘う特捜部 貫く謎 朝日新聞文化部
-
-
コミック・セレクト 熊倉献「少し長めの一瞬」 SF的設定を軽妙に切なく描く 南信長
-
インタビュー バイオリニスト・廣津留すみれさん「音楽脳×勉強脳の使い方」インタビュー(前編) 続ける力も、変える柔軟さも大事 加賀直樹
-
イベント 第13回「料理レシピ本大賞 in Japan」表彰式レポート リュウジさんの“頑張りすぎない弁当”が料理部門大賞に 好書好日編集部
-
谷原書店 【谷原店長のオススメ】 坂上暁仁「神田ごくら町職人ばなし」 仕事に向き合う心意気を描ききる 谷原章介
-
トピック 【PR 光文社・創英社・みすず書房・ミネルヴァ書房】プレゼント 朝日新聞1面広告の本、好書好日メルマガ読者計20名様に
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版