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公開延期の映画「台風家族」を小説化 ユニット「市井点線」

「市井点線」のユニット名で小説を出した市井昌秀さんと早苗さん

 映画監督の市井昌秀さんと妻で俳優の早苗さんがユニット「市井点線」として、小説『台風家族』(キノブックス)を出した。元になった脚本は、市井さん監督・草彅剛さん主演で今夏に公開予定だった同名映画のために書かれた。しかし、出演俳優が逮捕、起訴された影響で公開のめどは立っていない。
 市井監督は、2008年の釜山国際映画祭で最高賞となった「無防備」など、ユーモアとシリアスを交えた世界観で注目を集める。今作は構想から12年をかけてオリジナル脚本で臨んだ。市井監督は「どの表現者も同じだと思うが、作った以上は、小説も映画も我が子のような存在。世に出したい思いはある」と言葉を選びながら話した。
 物語は、父が銀行強盗を起こし、母と共に失踪した10年後に実家に集まった4人の子どもらの視点で進む。強盗の真相が明らかになるにつれ、家族のつながりに気づいていく。
 家族をテーマにしたのは、市井監督が地元の富山でプラスチック工場を営んでいた両親と離れ、長く東京で暮らし、「両親のことを考えていない罪悪感」に襲われたからだ。身近でその思いを感じた早苗さんは「彼が表現したい世界を文章にできるのは私しかいない」と2人で執筆した。市井監督は「純粋に、小説として読んでくれたらうれしい」と話す。(宮田裕介)=朝日新聞2019年6月5日掲載