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「世界魚類神話」書評 古今東西のサカナ伝説が満載

評者: 諸田玲子 / 朝⽇新聞掲載:2019年08月03日
世界魚類神話 著者:篠田 知和基 出版社:八坂書房 ジャンル:哲学・思想・宗教・心理

ISBN: 9784896942620
発売⽇:
サイズ: 22cm/213p

世界魚類神話 [著]篠田知和基

 オンディーヌにローレライ……西欧の水辺の妖精は美女なのに日本は河童(かっぱ)?
 大半の西欧諸国では七つ頭の竜なのに、日本では八尋ワニに八俣の大蛇?
 人気番組のチコちゃんに訊いてみたいような謎解きが満載。日本・アジア・西欧の神話や伝説に、魚類が登場する世界各地の文学から童謡・詩・短歌・俳句・ことわざも。しかも百点を超える図版まで掲載されているので見ているだけでも愉しい。本書の他にも動物や植物、鳥類、昆虫の神話を集めた既刊本もあるというから、著者の無尽蔵な知識と長年の研究成果には頭が下がる。まぎれもない労作だ。
 それにしても、世界中に浦島太郎や因幡の白兎(しろうさぎ)によく似た伝承があるのは興味深い。竜宮伝承もしかり。竜宮とはいったいなんなのか。水底の住民が鍛冶族であり、高度な金属文化をもっているという一説も、私には目からウロコだった。古今東西の神話を紐解けば無味乾燥な日常もきっと彩り豊かになるはずだ。