寺山修司は地獄に憑(つ)かれた人だった。詩に歌に散文に、地獄地獄と書きつけている。
川に逆らひ咲く曼珠沙華(まんじゅしゃげ)赤ければせつに地獄へ行きたし今日も
その寺山にも触れながら、日本仏教美術史の専門家加須屋(かすや)誠氏が著したのが『地獄めぐり』である。カラー多数の地獄絵が随所に収められ、真夏に開けば納涼の役も務めてくれるかもしれない。
著者によれば、地獄とは暴力とエロスの世界で、「地獄絵を真剣に観(み)ることは、無意識にある自分自身の本性に目を向けることである」。地下8階建てとされる地獄の各階の責め苦を丹念に解説し、三途(さんず)の川や賽(さい)の河原、閻魔(えんま)王の来歴を教えてくれる。
斎藤茂吉、太宰治から西行、清少納言まで動員し、著者は地獄に向けられた「まなざし」を読み解こうとしている。『往生要集』や『日本霊異記』はもちろんのこと、言及される文学の原典を手に取ってみるのもお盆休みの一興か。衣笠貞之助や神代辰巳らによる「地獄」ゆかりの映画も紹介している。(福田宏樹)=朝日新聞2019年8月17日掲載
編集部一押し!
-
文芸時評 分類 押し付けられる苦さ ここにない世界を見る心 都甲幸治〈朝日新聞文芸時評26年4月〉 都甲幸治
-
-
谷原書店 【谷原店長のオススメ】長瀬ほのか「わざわざ書くほどのことだ」 対照的なふたり、軽妙なエッセイに 谷原章介
-
-
わたしの大切な本 映画監督・山中瑶子さんの大切な本 「未熟は普通」絶望から開けた道 堀越理菜
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
インタビュー キング×センダックの絵本「ヘンゼルとグレーテル」訳者・穂村弘さんインタビュー 人が“怖い物語”に惹かれる理由 中村茉莉花
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版
-
インタビュー 湊かなえさん「暁星」インタビュー 作家として「言葉」に向き合い、新たな扉開いた PR by 双葉社