――猫好きの間で池崎さんは今、かなりアツい存在です。SNSで発信している風ちゃん雷ちゃんへのデレデレっぷり、猫飼いの一人として共感しかなかったので、お会いできてうれしいです。
今回本を出すことになって、今日だけで取材が9件なんですよ。こんなことは芸人になってから初めてです。しかも取材にいらっしゃる方全員が、猫を飼っているという。すごいっすね。
――本も早速拝読しました。昨年5月に保護猫団体を介して出会った風ちゃん、雷ちゃんを迎えてからの「池崎家の軌跡」が分かる一冊ですね。2匹の可愛さはもちろん、初めて猫と暮らすプロセスや池崎さんの心情もすごくリアル。完成した本を見ていかがですか?
自分で言うのも何ですが、すばらしいですね……空前絶後です。表紙の写真だけは、僕がいなくてもいいかなと思っているんですけど。ちょっと営業妨害になるんじゃないかというくらい、サンシャイン池崎じゃない、ただの池崎慧(さとる)が出ちゃってて、照れ臭いです。
――確かに、「イエェェーーェエイ!!!」って叫んでいる人とはどう見ても別人です(笑)。池崎さんにとって、猫を飼うことは長年の憧れだったそうですね。
子どもの頃、家に来る野良猫をよくかわいがっていたんです。骨付きの唐揚げを食べたら骨をあげる、なんていうことをしているうちに、自然と猫が好きになっていきました。でも父親が猫嫌いなので、家では絶対飼えませんでした。
実家を出て一人暮らしをするようになってからも、いつかは猫を飼いたいとずっと思っていました。野良猫って、毎日は遊びに来ないじゃないですか。だからたまに来てくれたり、町を歩いていて会えたりすると、めちゃくちゃうれしいんですけど。でも、もし自分の家で猫を飼ったら、毎日そばにいるわけです。夢の生活過ぎるなあと、憧れていました。
芸人として売れてお金にも余裕が出てきたけれど、僕は物欲とかもそんなになくて、やりたいことといえば引っ越しして、ちょっと大きめのテレビを買うくらい。それでもう、猫しかいない!と。
――実際に風ちゃん雷ちゃんと暮らし始めて、思い描いていたのとは違ったり、予想外だったりしたことはありますか。
これはいい意味での予想外ですが、以前、友達の猫を2、3日預かったことがあって、全然なつかなかったんですね。だから、猫ってたまに近寄ってきてくれたら「やったあ!」ってなるようなイメージがありました。でもこの子たちはめちゃくちゃ人懐っこくて、家に来た日から触り放題。それがまず驚きでした。
困ったことは、たまに羽毛布団をダメにされることですかね。部屋中羽毛だらけになっていて、何かと思ったら布団が破けていました。あと、僕の帰りがめちゃくちゃ遅くなると、長時間の留守番でストレスがたまるのか、トイレの砂を床にまき散らしています。最近では紙袋にしまってある好物の「CIAOちゅ~る」(スティック状の猫のおやつ)に勝手に手を出しちゃっていることも。家に帰ったら、食いちぎられた「CIAOちゅ~る」の残骸が散乱していました。
――それはちょっとした「事件現場」ですね。そういう時は2匹に何て声をかけるんですか? 「コラッ」ですか?
「あ~、ごめんね~」です。早く帰らない方が悪いんです。僕は常に風ちゃん雷ちゃんファーストでやらせていただいています。
――何をされても猫たちのかわいさで帳消しされる気持ち、よく分かります。風ちゃん雷ちゃんと暮らしていて、一番幸せを感じるのはどんな時ですか。
普段、僕と一緒に寝るのは雷ちゃんで、風ちゃんはキャットタワーの上かテレビの裏で寝ているんですね。でもたまーに、朝起きると、頭の横にはいつものように雷ちゃんが丸くなっていて、反対を向いたら風ちゃんもいることがあるんです。雷ちゃん、僕、風ちゃん、ベッドの上で3人が横並び。幸せ過ぎて、「誰かこの状態を見てくれ!」って思います。
――池崎さん自身が、風ちゃんと雷ちゃんが来てから変わったなあと思うことはありますか。また、この1年で2匹と池崎さんの関係にも何か変化はあったでしょうか。
僕、本来は面倒くさがりなんですけど、キャットタワーとか、壁に取り付けるキャットステップの組み立ては余裕でやっていますね。掃除機も毎日かけるようになりました。あとは朝早くたたき起こされるので、夜も早く寝るし、生活リズムが良くなった気がします。
風ちゃん雷ちゃんとの関係では、「家族感」が強くなったと思います。最初は存在そのものが新鮮で、小さくて、かわいくて仕方がなかった。今ももちろんかわいいんですけど、見た目もでっかくなったし、一緒にいて当たり前の家族になってきました。「うわ~かわいい!」から「よし!いいぞ!」「お前、何やってるんだよ!」みたいな。
――今回の本は、保護猫を迎えるということや生きものの命を預かる責任、保護猫団体の活動についても分かりやすく紹介されていて、初めて猫を飼う時の入門書にもぴったりだと思いました。漢字に全部ふりがなも振ってあるので、子どもも楽しめますね。
本を作ることになった時、硬くない、間口の広いものにしたいなと思いました。子どもも読みやすくて、猫がそんなに好きではない人も手に取れる、絵本みたいな感じというか。
僕は風ちゃん雷ちゃんを保護猫団体に譲ってもらいましたが、それでおしまいにしたくなくて、時々ボランティア活動に参加しています。今は多頭飼育崩壊の現場から救出された猫たちが一時保護されている場所に行って、トイレ掃除やエサの交換などのお手伝いをしています。人懐っこいかわいい子もいますけど、きつい環境に暮らしていた子たちなので、病気の子や、警戒心むき出しの子もいる。毎日お世話するというのは本当にすごいことです。
僕の本を通じて保護された猫たちのことやお世話をする人たちの苦労も知ってもらいたいですし、子どもの時に読んで、将来保護猫を飼いたいと思ってくれたらいいなと思いますね。
――それにしても、風ちゃん雷ちゃんのことを話している時の池崎さん、テレビで見るイメージと全く結びつきません。口調も穏やかですし。
普段の僕は静かなんですよ。猫って大きな物音が苦手だから、くしゃみも抑えようかと思っているくらいです。こんな素の僕を知られたら、もしかして笑えなくなる人がいるかもしれないですね。「めちゃくちゃな芸やってるけど、なんかいい奴じゃん。本当は無理してるのかな?」とか(笑)。まあ、あんまり気にしていないですけどね。
「好書好日」掲載記事から
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