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クリームソーダ作りは服作りに似ている クリームソーダ職人・tsunekawaさんインタビュー

文:岩本恵美、写真:松嶋愛

――小さい頃に、おじいさん、おばあさんと一緒に飲んだクリームソーダが原点だそうですね。

 祖父母の家に泊まりにいくと、近所の喫茶店に一緒に行って、いつもクリームソーダを注文していたんです。そこから好きになって、大人になって上京してからも、ちょっと時間が空いた時に喫茶店に入っては飲んでいました。

 クリームソーダって、お店によって味や分量、グラスなども変わってくるので、そういったところも楽しみのひとつなんですよね。

――もともとクリームソーダはお好きだったようですが、クリームソーダを作る「クリームソーダ職人」になったきっかけは何だったのでしょうか?

 作り始めたきっかけは、2年前に友達と一緒にやった「クリームソーダを作る会」。青いクリームソーダを作って、そこからハマっていって、いろんな種類のクリームソーダを作り始めました。

 それまでは、緑や青などの単色の、いわゆる昔ながらのクリームソーダが主流で、そういうものしか見かけなかったので、「自分でデザインしたらどうなるんだろう」と思ったんですよね。作ってみたら色々できることに気づいて、ある程度レシピの数が増えてきたころから肩書きとして何かあった方がいいなと、「クリームソーダ職人」を名乗るようになりました。

―― “デザイン”という視点からクリームソーダを捉えるのは、服のデザイナーでもあるtsunekawaさんならではで面白いです。服作りとクリームソーダ作りには共通点が多いと本にも書かれていましたが、どういうところが似ているんでしょう?

 僕としては、服作りで行なっているデザインプロセスを、クリームソーダに落とし込んでやっている感覚なんです。

 洋服だったら、「身体をどう美しく表現していくか」「どういう気持ちで着てもらうか」「それを着た結果どういう所作や行動を生んで、周りの人たちにどう見えてどんな影響を及ぼすか」などを考えます。

 そういう服の考え方に近しいものがクリームソーダにもあると思うんです。たとえば、ものすごく暑い日に陽が照っている中にクリームソーダが一つあるだけで、夏っぽさが出たり、涼しげだったりする。「きれいだな」という感情が芽生える人もいるかもしれない。そういう感情や空間の見え方などを、ある種コントロールできるのがデザインの力だなと僕は感じていて、洋服もクリームソーダもそれを表現できるという面白さが似ているかなと思います。

“東京以外”の可能性を感じた「旅する喫茶」

――今年の春からは友人とともに「旅する喫茶」と銘打って、日本各地でイベント的に喫茶店を開き、クリームソーダを作るという活動をされています。お客さんと直接お会いすることで、ご自身の中で何か変化や発見はありましたか?

 やっぱり、味については、自分や友達で飲んでいる時よりもシビアになりましたね。レシピはざっくりとしたものしか作ってなかったんですけど、お客さんに飲んでもらうということを考えて、しっかりと練り直しました。

 それと、「旅する喫茶」のメニューにはカレーもあるんですけど、クリームソーダがカレーにどんな味の変化をもたらすのか、どうしたら味の深みが増すのかなど、カレーとの組み合わせを気にするようになりましたね。

 「旅する喫茶」は実際には僕らが旅をしているんですけども、来た方にも“旅”をしてもらいたいと思っています。そこで、「旅する喫茶」を拠点にその周辺の土地の良さを感じてもらいたいなと、僕がデザインした服を試着して散歩したり、外で写真を撮ったりできるようにしています。そうやってお客さんに思い出を作ってもらうことで、「旅する喫茶」に普通の喫茶店やカフェに行く以上の価値を感じてもらえているというのが貴重な体験でした。

tsunekawaさん特製の空色のクリームソーダTシャツ。クリームソーダができあがっていく過程に胸キュンです。

 あと、いろんな土地を訪ねて、農家や食関連の方々、地方自治体の方々のお話を聞くことが多くなって、体感的に東京以外での可能性も感じましたね。いわゆる「地方」にもめちゃくちゃ魅力がある。でも、その魅力をうまく発信しきれていない部分、もったいないなという部分が多いなという印象があって、「旅する喫茶」を通してもっと盛り上がれる発信をしていけたらなと思いました。

――各地の農家さんなどとの出会いの中で、その土地の特産品を使ったメニューも生まれたのでしょうか?

 もちろんです。毎回、各地でレシピを開発しています。たとえば、香川県産の「瀬戸内レモン」を使ったレモンスカッシュや、カレー用にレモンの添え物を作りました。他にも、北海道なら野菜が美味しいので、北海道産の野菜を使ったベジタブルカレーを作ったこともあります。僕らはそうしたレシピを東京に持ち帰ってきて、東京の方にも楽しんでもらうという取り組み方をしています。

クリームソーダに癒されて

――初めて作ったクリームソーダが青色で、本のタイトルも『空色のクリームソーダRecipe』。青や空色に何かこだわりがあるんでしょうか?

 もともと僕が青という色に惹かれるところがあって、自分の好きな色っていうのが大きいですね。それと、僕自身、疲れた時やいっぱいいっぱいになっちゃった時に、空を見上げたり、空を眺めてボーッとしたりする時間を作ると、けっこう救われる部分が多かったんです。そういう自分が感じたものを、グラスを通して僕のクリームソーダを飲んでくれる人にも感じてもらえたらいいなというところがあって、「旅する喫茶」でも空色のクリームソーダはよく出しています。

 クリームソーダは“癒し”ですよね。僕も仕事の合間などにクリームソーダを作って飲んでいて、本当に癒されます。アイスクリームが少しずつ溶けていく様子を眺めていると落ち着きますよ。いつまでも食べずに、じんわりとアイスが落ちてくるのを見ているお客さんも多いです。

 仕事も含め、一人ひとり忙しい時代。ぜひクリームソーダ会を開いて、ふだんは中々会えない人や会話が少なくなっている家族などと、クリームソーダを作りながらコミュニケーションを深めていったり、クリームソーダを飲みながらゆっくり話をしたりして、楽しんでほしいです。

「僕はわりとしっかりグラスに入れるので、ストローでソーダ水を少し飲んでから、アイスを絡めて飲むようにしています。やっぱり、いっぱい入っている方が喜んでもらえるんですよね」(tsunekawaさん)