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月刊誌「地理」 地形アプリにジオ菓子……一般読者に向けた絶妙なツボ

「地理」9月号

 月刊誌「地理」の8月号が売れているというので手にとったら、特集が「ブラタモリの探究」だった。

 なるほど。たしかに「ブラタモリ」は気になる。土地の成り立ちを知るだけで知的興奮が得られることをこの番組は教えてくれた。いや、もともとあった地理への興味を引き出してくれたといったほうが近いかもしれない。

 私は学生の頃、地理に強い関心を持っていた。だが高校で地理を選択したら、地形や気候まわりの面白いところはすぐに終わり、ボーキサイト生産量の円グラフがどうしたという経済の話になって、自分が興味があるのは地学だったのかもと後悔したことがある。

 ところが地学は地学で町の発展や文化の話などは出てこず、もっと両者の中間的な学問はないのかと欲求不満が募ったのだった。

 今ならわかる。私が学びたかったのは、ブラタモリで紹介されるような、その場所の持つ面白さだったのだ。

 月刊誌「地理」も地理の面白さをどのように伝えるか腐心しているようだ。地味な表紙とは裏腹に、一般の読者でも興味をそそられそうな特集がたくさん組まれている。

 たとえば最新9月号の特集は「すぐ見られるGISに触れてみる」。

 GISとは、地理情報システムのこと。地図にいろんな情報が盛り込まれたアプリがたくさん出ているから使ってみようという特集である。普通の地図ではわからない地形の凸凹が見える「スーパー地形」アプリや、古地図と現代の地図を並べて見られる「今昔マップ」のほか、世界中の航空機の位置がリアルタイムでわかる「フライトレーダー24」など、たとえ用はなくても使ってみたくなるアプリが複数紹介されている。

 5月号では「ソーシャルビジネスとジオパーク」特集として、ジオパークをどうビジネスに繫(つな)げるかを問い、その一例としてジオ菓子が取り上げられていた。ジオ菓子は「爪木崎(つめきざき) 柱状節理(ちゅうじょうせつり)クッキー」や「堂ケ島 水底(すいてい)土石流パウンドケーキ」など、伊豆の有名な景色や岩石に似せたお菓子で、前々から面白いと注目していた。

 さらに個人的に瞠目(どうもく)したのは7月号の「崩れる火山」特集で、火山の山体崩壊を集中的に取り上げている。

 山体崩壊! 今までそれについて考えたこともなかったが、地球の営みのデカさをあらためて認識した。

 一見地味に見えるジャンルでも、詳しく知れば惹(ひ)かれる対象は必ずある。「地理」は、読者のツボをピンポイントで突いてこようとしている。