死を通して生が見えてくる――224点の写真を収録した『教養としてのミイラ図鑑 世界一奇妙な「永遠の命」』(ミイラ学プロジェクト著)には仰天した。
インカ時代にいけにえとされた少女のミイラは冷凍状態で発見、服を着て髪は丹念に編まれ、眠っているよう。デンマークの湿地で見つかったミイラはのどを切り裂かれて殺害された形跡が残る。
表情も様々だ。タクラマカン砂漠の東端で発掘された約3800年前の「楼蘭の美女」は穏やかな顔、エジプトのラメセス2世や日本の即身仏は威厳がある。ドイツのドレスデンの爆撃でミイラ化して亡くなった女性は痛ましい。
人工的に作ったものも、環境や気候条件で自然にミイラ化したものもあるが、数々の写真からは生前の姿や抱えていた思いが立ち上ってくるようだ。死者をとどめたいと願った人々の強い気持ちも。
寄稿やコラムで死生観や世界のミイラ文化を探れるのも面白い。
本屋で本を手に取り、めくるうちに、すっかりミイラに魅入られてしまった。(山根由起子)=朝日新聞2019年9月7日掲載