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「僕らはそれに抵抗できない」書評 テクノロジーが操るスマホ中毒

評者: 長谷川眞理子 / 朝⽇新聞掲載:2019年09月14日
僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた 著者:アダム・オルター 出版社:ダイヤモンド社 ジャンル:健康・家庭医学

ISBN: 9784478067307
発売⽇: 2019/07/12
サイズ: 19cm/402p

スマホ、フェイスブック、インスタ、ネットフリックス、ゲーム、メール…。新時代にはびこる依存症から逃れる術はあるのか? のめりこませる手口とその仕組みの全貌をあばき、対処法…

僕らはそれに抵抗できない 「依存症」ビジネスのつくられかた [著]アダム・オルター

 昨今、公共の場所を移動している間に、なんと多くの人々が前を見ずにスマホの画面を見ていることか。電車がどんなに混雑してきてもスマホの操作をやめない人。どんなに子どもが話しかけても、返事をせずにスマホの操作を続ける親。こんな光景は、もう日常茶飯事である。
 では、この人たちはスマホを手に、いったい何をしているのか? 誰かとおしゃべりする、動画を見る、ゲームをする、などなど。切迫した仕事をしている人もゼロではないのだろうが、圧倒的多数の人は、別にやらなくてもよいことをしている。なぜか? そう、誰もが依存症なのだ。
 本書は、ネット関係の各種テクノロジーが、薬物中毒と同じように脳に働きかけて、その行動をやめることができないように仕向けている現実を冷静に描き出す。中毒がどのように作られるのか、なぜ人はそれに惹きつけられるのか、依存症のメカニズムを探る実験も豊富に紹介される。
 人は、誰かに称賛されることが好き、他人と比べることが好きで、次にどうなるかが不確実だとついつい先を見たくなる、などなど。ネット関係のテクノロジーは、こんな人間の本来の傾向を巧みに利用している。だから、「僕らはそれに抵抗できない」。これは「依存症ビジネス」だ。
 子どもはまだ自己抑制が十分にできないので、とくに依存症になりやすい。そして、現実の人づきあいや現実の社会生活を、現実の中で学ばねばならないのに、その時間をネットに使ってしまっている。依存症になった人は、環境を変えるとそれを克服できることが多いのだが、スマホは今や誰にとっても手の一部となっており、スマホ環境からは逃れられない。
 アップルのスティーブ・ジョブズが、素晴らしい製品としてiPadを発表したのが2010年。でも、彼が自分の子どもにはiPadを使わせなかったって、ご存知?
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 Adam Alter ニューヨーク大准教授(行動経済学、心理学)。著書に『心理学が教える人生のヒント』。