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平成と昭和は全然違う! 「平成男子論」手条萌さんにきく平成世代のサバイバル

文:篠原諄也 写真:有村蓮

――平成を振り返る本を出した手条さんですが、そもそも昭和と平成の違いって何だと思いますか?

 もう全然違いますよね。平成はナンバーワンではなく、オンリーワンであることを求められた時代でした。ゆとり教育でずっとそう言われ続けたじゃないですか。でもそれって結構厳しい。「自分にはできることがないから就職できない!」みたいな、意味不明な思考回路になってしまったりします。
 本当オンリーワンであるべきだというのは呪いだと思っていて。ゼロ(2000)年代はその呪いをかけ続けられた時代でした。大衆を洗脳するにはSMAPみたいな イケメンが「オンリーワンになれ」って言うのが一番良かったのかなと思っちゃうくらいです。でも結局、オンリーワンを歌って突き詰めたSMAPもああいう解散の仕方になってしまう。難しいですよね。

――「自分らしく生きるべきだ」と散々言われるけれど、ちょっと目立ったことをすると喜ばれない。そんな矛盾がありますね。学校では空気を読まないといけないし、就活でも完全に目立ったらアウトで、ちょうどいい具合に常識人じゃないといけないというか。

 そうなんですよ。グループディスカッションでリーダー的ポジションよりもタイムキーパーはちゃんとやるような子が求められたりとか。それに企業の採用基準って、ほんのりしたことじゃないですか。「うちとは合わないと思う」「協調性がない」とか、ぼんやりした実態のないことで評価され続けてきた。でもその都度なんとなく読み取って、自分で対応をして生き残ってきた世代だと思います。
 私が就活で採用されたのは、新卒採用をしていない会社でした。急に電話をかけて「すみません、募集していませんか?」って話して。だから内定式に出るとか同期で集まるとか、そういう経験がありませんでした。そこからのはぐれもののスタートだったのかもしれないですね。

(平成2年生まれのカメラマン・有村さん)自分たちの年代って、先輩が昭和の人で、後輩は平成生まれじゃないですか。上にも下にも気をつかわないといけない。板挟みの世代だと思います。僕は工業高校だったので、先輩の言うことは絶対で、部活でも先に行って準備しないといけませんでした。でもそれを下の世代にどこまで押し付けていいものなのか。どっちの感覚も分かるから、モヤっとするんですよね。

――今はその世代が30歳くらいなので、仕事でも年下の世代ができてきて、ちょうど違和感を感じますよね。

 狭間だからこその辛さって凄くあると思いますよ。22歳くらいの新入社員の人を見ると、やっぱり「ちゃんとやってよ」って思っちゃうんですよね。押し付けがましく「社会人とは」みたいな本を渡してみたりするんですけど。こんなことをやってるのは昭和風でよろしくないなとも思うので。

親世代が身を以て知っている「結婚しても幸せじゃない」

――平成世代の恋愛・結婚観についてはどう思いますか?

 恋愛や結婚を重視しない時代になったのかなと思います。恋愛したい人はすればいいし、そうじゃない人は別にしなくてもいい、みたいな感じじゃないですか。
 今は女性の社会進出が当たり前ですよね。昔だったら寿退社もありました。多分これまでの価値観だったら、私も「30歳なのに結婚もしないでどうするの?こんな本を出して」とか言われるんだと思います。でも今は言われないじゃないですか。

――結婚に対する憧れもないし、周りからの圧力も少なくなっているんでしょうね。恋愛は人それぞれに好きにしたらいいっていうか。

 結婚しても幸せじゃないサンプルって無茶苦茶あるじゃないですか。ていうか世の中のサンプルって、ほとんどそうじゃないですか(笑)。従来だったら「結婚しなさい」って言う親世代も、結婚しても幸せにならないことを身を以て知っています。自分の子に同じ状況になってほしくないから、言わないんじゃないかと思います。

――ただ一方で30歳くらいになると、周りで結婚する人も増えてきます。そうした人たちを見て、どう思いますか?

 「早く別れれば?」と思います(笑)。なぜなら自分は使えないお金なのに、なぜか目が眩んで結婚してDVやモラハラを受けてるなんて、もう何のメリットもないです。それぞれの事情があると思うので、こっちがとやかく言うことじゃないと思うんですけど、少しでも不満があるんだったら別れたらいいのにと思います。会社も一緒です。

ラブからウェイへ。化け物の時代に

――今回、平成「男子」に着目したのはなぜでしょう?

 もともとイケメン評論から始まったからでした。私が女子でイケメンが気になっていて、イケメンって何だろうと思って。それを掘り下げていったら、男子の生き辛さと密接に関わっているなと気付いたんです。
 でも結局、平成「女子」論でもあると思っています。鏡的な存在なのが女子だと思うので、男子と女子の相互関係とか、お互いをどう思っているかとか、そういうところを中心に書きました。

――平成を語る際に軸にするべきなのがイケメンだとしていますね。全然考えたことがない視点だったので新鮮でした。

 イケメンっていうのは顔の造形の話じゃないんです。イケメンという言葉の発祥は諸説あるんですけど、ひとつはギャル雑誌「egg」(1999年1月号)らしくて。アゲアゲな渋谷文化の中で生まれたもので、脱スペックの文化だと思います。
 80年代までは男性は三高(学歴、収入、身長)が重視されていたんですけど、90年代に「イケてるか」どうかが基準になってきました。スペックとは切り離して、その人のキャラクター込みでどう評価されるかに変わりました。

――その後のゼロ年代は容姿重視の時代だったと分析しています。確かにその頃は容姿がいい人はもてはやされていましたね。

 ゼロ年代は結構容姿にシビアだったと思います。オタク文化が表に出てきていた。オタク文化というか2次元キャラはビジュアルで勝負するので、ブサメン排除みたいな世界ですよね。現実でも見た目がいい人が評価される10年だったと思います。
 それがテン(2010)年代に入って変わってきました。ハロウィンが象徴的だと思うんですけど、化け物の時代になった。ラブからウェイへって言ってるんですけど。これまではクリスマスを恋人と過ごしてきたけど、今は大人数で仮装をして盛り上がる。仮装して闇に紛れるので、顔の造形は関係ありません。そのぶん肌露出するんでしょうけど。脱見た目はここまできたかと思いますね。

――これから平成世代はどう生きていけばいいでしょう?

 大人になっても鋭角的であることを意識する。それを忘れてはいけないと思います。気がつくと仕事やそれに紐付く飲み会ばかりの生活になってしまう。それだけじゃまずいなと思うんです。鋭角的であるために、本当に遊ぶことをやめちゃダメだと思います。非生産的な遊びが重要です。
 仕事なんて誰でもできるじゃないですか。でも、遊べるのは自分しかいない。会社の忘年会をサボって、カラオケに行くべきです。もう行きたくない飲み会でお酌とかしてる場合じゃないです。ラベルを上にしている場合じゃないんです。

(有村)付き合いの飲み会で愚痴の言い合いとか聞いているのは本当嫌ですよね。「俺は若い頃ヤンキーだった」みたいな武勇伝を聞くのも面倒くさいです。そういう意味でも、自分がおじさんになっても、趣味があって遊びを知っていたら、若い人とその話ができて距離が縮まる。遊びは絶対に大事だと思いました。