1. HOME
  2. コラム
  3. 気になる雑誌を読んでみた
  4. 雑誌「昭和40年男」 レトロに浸る姿勢、実は21世紀型?

雑誌「昭和40年男」 レトロに浸る姿勢、実は21世紀型?

 見ればわかる、ターゲットは昭和40(1965)年生まれの男性。

 ずいぶん読者を絞ったなあと思うけれども、今やどんな雑誌もニッチなファンを囲い込まないと生き残れない、そんな現状を反映しているとみれば理解できる。ジャンルではなく、世代で斬ったところが斬新だ。団塊ほどではないが人口もそれなりに多く、スマホより雑誌に親しんできた世代という点で納得のいくターゲット設定である。

 驚いたのは、ほとんどのバックナンバーが売り切れていることだ。しかも今年で10周年というから、ちゃんとファンがついているようだ。

 実は私も昭和39年生まれであり、ほぼターゲットである。バックナンバーの表紙を見ても、インベーダーゲームだの、カセットテープだの、松田優作だの、ウルトラの母だの、ノーランズだの、“わかる”ものが多い。

 ただ2000年代から続く昭和懐古ブームには、なんとなく乗れ切れないものもある。ノスタルジーに浸ってる場合か、とも思うのだ。われわれは未来の夢を見なくなってしまったのか。

 「昭和40年男」は未来をどう見ているのだろう。最新の10月号「還暦上等」特集にある未来予想図を読んでみた。

 それによると、これからは加齢による尊厳が生まれない社会になるとしている。還暦を過ぎても「優先席」を譲られることはなく、昔の社会のようなお爺(じい)さん扱いを期待しても無理とのこと。たしかに国にもずっと働けと発破をかけられているぐらいだしね。

 そのかわりネット上では加齢を感じる必要がなく、時代感覚も変わって、若者が70年代のレッド・ツェッペリンと2010年代のレディオヘッドを同時に聴くようになっていると説く。つまり流行そのものが分散し、古いも新しいもなくなっているということか。

 なので「確信犯的にレトロを追う本誌のスタイルは、実は21世紀型だったのである」というオチがついていたのには笑ったが、たしかに私の周囲でも若い人が昭和時代に建てられたビルをかっこいいと絶賛したりしていて、へえ、あんなものが、とおじさんの私は驚くことが増えてきた。

 最終的に、もっと未来社会への希望についても語って欲しい気持ちは残ったものの、基本は趣味の雑誌だし、全体に作り手が楽しんでいる雰囲気が伝わってきたので、まあいいか。阪神タイガースのレジェンド掛布雅之へのインタビューや、新幹線に寝台車が出来たかもしれなかった話、仮面ライダー1号藤岡弘、から50代へのアドバイスなど、思わず読み込んでしまった。=朝日新聞2019年11月6日掲載