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BMX選手・榊原魁さん 誰よりも努力してあきらめない姿勢を「MAJOR」から学んだ(前編)

文:福アニー 写真:有村蓮

プロ意識が芽生えたのは吾郎のおかげ

――BMX選手の榊原さんが、野球漫画の『MAJOR』にハマったきっかけを教えてください。

 僕は4歳から10歳まで日本に住んでたんですけど、8歳の時に野球部に入ったんですよね。BMXはその頃からやってて、大好きだったんですけど、あんまり学校の友達との共通点がなくて(笑)BMXの話をしてもわからないし、みんなはサッカーか野球やってて週末はずっとその話をしてるんで、僕もどっちかやりたいなって思って、野球部に入ったんです。それで10歳の時にオーストラリアに引っ越すまで、ずっと続けてましたね。
『MAJOR』に出会ったのも9歳の頃、野球部の仲間が読んでたから。僕が読み始めた頃は50巻くらいまで出てたのかな。その時に1巻から読んで、いまは78冊全部揃ってます。最初に読んだ感想は、普通におもしろかったです(笑)アニメも楽しく見てましたね。

――とくに好きなキャラクターは誰ですか?

 やっぱり主人公の吾郎ですね。プロになりたくて必死にトレーニングしてるところとか、体壊すまで練習してるところとか見て、自分もこういう風に練習したいなって思って。彼の野球に対する姿勢を見て、僕もこれくらいがんばりたいなって気持ちになったんです。それでオーストラリアに引っ越してから、BMXの講師をちゃんと見つけて、ちゃんとトレーニングしたいって親に言ったんですよね。なので、BMXをプロでやっていこうって意識を芽生えさせてくれたのは吾郎です(笑)

――物語は吾郎の幼少期から30代半ばまでの人生を追いかけていきます。日本だけではなく世界を見据えていたところなど、そこから学んだことはありますか?

 どんな困難があっても、そこであきらめるんじゃなく改善点を見つけて、努力で乗り越えていくところがすごいと思ってます。たとえば右肩を壊した時も、それをきっかけに左投げ投手になる。思い通りのプレーができなくなったときに、変化球が偶然生まれたり、新しい球種を練習したり。自分もあきらめない思考を持つようになったかな。

なんでも前向きに取り組むことが大切

――野球はチームスポーツ、BMXは個人スポーツという違いがありますが、通じるところはありますか?

 やっぱり誰よりも努力することですかね。吾郎はリトルリーグで日本一のチームに勝ったときも、中学で棒球(ヒットの打ちやすい威力のない直球)を克服したときも、高校で野球部の養成所「夢島組」に入ったときも、アメリカに行ってマイナーリーグからメジャーリーグに上がっていくときも、帰国して日本のプロ野球で活躍するときも、ずっと努力してる。終盤、自分に子どもができた後は、自分のお父さんと同じようにかっこ悪いんですよね。それも努力で乗り越えていく。とくに高校時代、夢島組の仲間がどんどん辞めていくなか、ひとりだけ生き生きしながらやってたじゃないですか。それで結果的に一番強くなっちゃうみたいな。そうやって、なんでも前向きに取り組むことが大切なんだってことを学びましたね。

©満田拓也/小学館
©満田拓也/小学館

 それでもがんばりすぎて、故障することもある。そんなときはトレーナーが折り紙とかさせて、休みの大切さを教える場面がありましたよね。そこはすごく親近感を持って読んでました。というのも、僕も本当にやりすぎちゃうタイプなんで。怪我して痛いのに、できなくなるまでやり続けちゃう。そういうところがすごい似てると思うので、吾郎の悪いところも学んじゃったのかなって(笑)

――もともと野球ではどのポジションでしたか?また、BMXに絞った経緯は。

 もともとはファーストで、日本を離れる直前からセンターでした。僕はずっとキャッチャーに憧れててキャッチャーミットも買ってたんですが、やらせてもらえませんでしたね(笑)
 BMX一本でがんばっていこうと思ったのは、オーストラリアに引っ越すときです。日本に住んでた頃は、やっぱり友達とできるってこともあって、野球のほうが楽しかった時期もありました。週末に練習しに行っても、ちょっと自転車乗った後、友達とキャッチボールしたりして。でも引っ越し先の下見をした際、自宅から一時間以内で行けるBMXのコースが、四つも五つもあったんですよ。東京では練習場が一つあっただけなんで、オーストラリアと東京では環境が全然違うなと思って。そもそもオーストラリアは野球がメジャーじゃないんで、チームを探すのも大変なんですよ。BMXだったら環境も充実してるし本気で取り組めそうだなって思って、本格的に始めましたね。

――『MAJOR』はオーストラリアに引っ越すときも持って行ったんですよね。

 当時出てるところまででしたが、もちろん全部持って行きました。それで新しいのが出る度におばあちゃんに送ってもらって。本当に何回も通して読みましたね。

――漫画はどんなときに読みますか?

 『MAJOR』はここ数年読んでないんですけど、また読みたくなってきましたね(笑)日本が冬の時、オーストラリアは夏なので、日本から自転車の友達が練習しに来たり家に遊びに来たりするんですよ。そういう時にみんなが漫画を見つけて読み始めるので、つられて読みますね。

――ほかの漫画や本でおすすめを教えてください。

 最近漫画は読んでなくて、本を読むことが多いです。英語の心理学の本とか。おすすめはティム・グローバーの『リレントレス 結果を出す人の13の法則』。ティムはマイケル・ジョーダンやコービー・ブライアントなどのコーチをやってたんですけど、その彼が選手たちのメンタルや姿勢について書いた本です。自分の競技だけじゃなく、普通の仕事でも生かせそうなのでぜひ!

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